暗い部屋の中、次第に目が慣れてくる。
ここ、巨人軍選手宿舎の両隣の部屋では先輩方がぐっすりと眠っていることだろう。
星、と名を呼んでくる伴の声がいつもの豪快な明るいそれではなくて、熱の篭った吐息混じりで、飛雄馬はつい顔を綻ばせる。
「な、なんじゃい!」
「ふふ……いや、何でもない」
真っ赤に頬を染めた伴の顔が容易に想像できて、飛雄馬はクスクスと吹き出しつつ、すまない、と謝罪の言葉を口にした。
「…………」
若干、前屈みになりつつ笑いを噛み殺しているのか体を揺らす飛雄馬の肩をそれぞれに掴んで、伴はほんの少し顔を傾けて目の前の彼の唇へと自分のそれを押し付ける。
一瞬、ハッと飛雄馬は目を見開いたがすぐに瞼を下ろすと、全身の力をゆっくりと抜いた。
すると、一度、伴が離れていったかと思うと再び熱い唇が触れてきて、飛雄馬はぴくっ、と身を震わせる。
はあっ、と熱っぽい吐息が唇に触って、飛雄馬は眉間に皺を寄せた。
「星、口を開けてくれ」
「………っ、ふ」
言われた通りに開いた唇の隙間から、唇よりも熱を孕んだ舌が滑り込んできて、飛雄馬は思わず顎を引く。
けれども、肩を掴む伴の手に更に力が篭って、それどころか、二人、座っているベッドの上に勢いのままに押し倒されて、飛雄馬は自分を組み敷く男の顔を見つめた。
ベッドのスプリングがゆらゆらと揺れる。
「ほ、星、い、いいか?」
この期に及んで、良いも悪いもなかろうに、むしろ、嫌だと言ったらどうするつもりなのだろうか、伴は、と飛雄馬は真剣な面持ちでこちらを見下ろしてくる伴の首に手を伸ばし、微笑んだ。
すると、伴は嬉しそうに唇をにんまりと歪めて、飛雄馬の背中とベッドの隙間に腕を差し入れると、ぎゅうっと彼の体を抱き締める。
飛雄馬は目を閉じ、ゆっくりと鼻から息を吸う。ああ、なんて心地良いんだろう、幸せなんだろう、この腕に抱かれていると、何でもできそうな気さえしてくる。
飛雄馬は伴の背中に腕を回して、その広い背をさすった。
と、伴はがばっと体を起こし、飛雄馬の脇の下からそれぞれベッドに手を付くと、そうっと彼の顔へと唇を寄せる。
ちゅっ、と唇を合わせると飛雄馬が口を開けたために、伴もまた口を開き、彼の口内へと舌を忍ばせた。
濡れた舌を絡めて、互いにそれを動かす度に微かに音が漏れる。
「……ん、ん、っ」
飛雄馬は両膝をすり合わせ、伴の腕に縋った。するとようやく、唇が解放されて一息ついたところに、伴は飛雄馬の首筋へと顔を埋める。
「あっ、だめ……」
「跡は付けん。心配せんでもええ」
「っ……」
薄い肌の上を淡く吸い上げられて、濡れた粘膜が這って、飛雄馬は身をよじる。
そうすると、寝間着代わりとなってしまっている白のタンクトップの裾から手が入り込んで、指先が腹を撫でた。
「ああっ、」
身をよじって、仰け反って露わになった飛雄馬の白い顎下に伴は口付けて、腹から脇腹を撫で、タンクトップを鎖骨辺りまで捲り上げると、現れた突起に吸い付く。
「は、ぁ………あっ、あっ」
体を大きく仰け反らせて、飛雄馬は口から鼻がかった声を漏らす。伴の口内で突起は膨らみを増し、固く立ち上がってくる。 伴は吸い付く唇の力を緩めると、固くしこるそれを舌先でくすぐった。
「っ………ぅ」
口元に手をやり、飛雄馬は声を殺す。いくら夜中とはいえ、聞かれてしまわぬとも限らない。すると再び伴は飛雄馬の乳輪ごと突起を咥えて、舌の腹でそれを嬲った。
「………〜〜〜〜っ!」
びくん、と一際大きく震えた飛雄馬の下腹を撫で、伴は彼の穿く下着へと手を伸ばす。下着に染みができるほどに勃起しきった逸物に直接手を這わせ、伴は窮屈な布の中から解放してやった。
「だいぶ先走りが漏れとるのう」
「誰の、っ………せ、っで……」
からかうように言って、伴は飛雄馬自身のカウパーでぐちゃぐちゃに濡れた彼の男根を握ると、一度亀頭部位までニュルッと手を上げてから、今度は一気に根元までしごいた。
「う、あ、あっ!」
思わず口から手が離れ、飛雄馬は声を上げる。腰が変に震え、腹の奥が疼いた。
と、伴は体を起こし、飛雄馬の逸物をゆっくりとしごき始める。
先走りのせいで既に濡れている飛雄馬の逸物からは更に先走りが溢れ、伴の指を濡らす。
「っ、あ………ン、んっ………ん」
いつの間にか飛雄馬の目尻には涙が浮かんでおり、今にも頬を滑り落ちそうになっている。白い腹が苦しそうに上下し、飛雄馬が眉間に浮かべる皺も深くなっていく。
「いっ、…………で、るっ」
呻いて、飛雄馬は全身を強張らせ、精を吐く。逸物はびゅく、びゅくと脈動し、飛雄馬の腹へと落ちる。彼の全身はがくがくと痙攣し、小さく縮こまってしまっている。
「は…………っ、はあっ、はあっ……は、っ」
荒い呼吸を繰り返して今なお、身を痙攣させる飛雄馬の尻へと、伴は枕元に置いていた軟膏のチューブから中身を取り出し、塗り込んでいく。
興奮しきり、脱力している飛雄馬の後孔はある程度柔らかくなっており、物欲しそうに疼いていた。
後孔の窄まりの上をゆっくり弧を描くようにして往復し、緊張が解けたところで、伴はそこに指を飲み込ませる。
「う、っ…………っ」
飛雄馬の様子を伺いながら、二本目を挿入し、伴はそこを解していく。
頃合いだろうか、と伴は指を抜いて、飛雄馬の足の間に移動し、穿いている下着を脱ぐと、彼の尻へと怒張を充てがう。
「入れても、ええか」
訊くと、飛雄馬は頷いて、伴が挿入しやすいよう足を開く。伴は逸物に手を添え、宛てがったそこへと腰を押し付ける。
ずずっ、と飛雄馬の腹の中を這いずって、伴の逸物は彼の体内へとゆっくり進んでいく。
「く、ぅ………うっ」
目を閉じ、喉を晒して、飛雄馬は伴を受け入れる。その内に、根元までを飲み込ませて、伴はふうっ、と大きく息を吐いた。
飛雄馬もそこで初めて目を開け、伴を仰いだ。繋がっている箇所が切なく疼く。
伴を強く締め付けているのが自分でも分かる、と飛雄馬は、動いて、と小さな声で囁く。そうすると、伴は小さく腰を動かし始める。粘膜を男根が擦って、飛雄馬は、んっ、と呻いた。
「星……星」
声と共に顔を寄せ、伴は飛雄馬の唇へ自分のそれを押し当てる。半ば強引に舌をねじ込んで、腰を叩き付けた。
ベッドが軋んで、ぎしぎしと音を立てる。
「ばっ………あ、あっ!ッ」
腰を叩かれ、飛雄馬は布団を掻くが、伴がそれぞれ指を絡め手を握る。
逃げる腰を押さえつけられ、腹の中をめちゃくちゃに抉られる。飛雄馬の全身に汗が滲んで、頭は朦朧としてくる。
離れた唇を再度触れ合わせて、伴は飛雄馬の中で達した。その精を吐く脈動を体内で感じつつ、飛雄馬もまた体を戦慄かせた。 そうして二人、後処理を終えて、飛雄馬はまだふらつく体で同じ布団に入る。
狭くないか、と飛雄馬が訊くと、伴は大丈夫じゃい、と答えた。
「………おやすみ、伴」
「ああ、また明日」
お互い見つめ合って、二人は微笑んでから目を閉じる。飛雄馬は隣で眠る伴の手をそっと握って深呼吸をした。
「……星」
呼ばれたが、寝たふりを決め込んで飛雄馬は黙っている。
すると、伴もまた手を握り返して来て、飛雄馬は小さく笑むと、次第に重くなり下りてくる瞼に逆らうこともせず、ゆっくりと眠りに落ちた。