クリスマス
クリスマス 「おう、星ぃ」
聞き慣れた声がして、飛雄馬は背後を振り返る。するとどうだ、すうーっと後部座席の窓を開けながら徐行運転でこちらに近寄ってくる一台の車が目に入って、飛雄馬は、そこからぬっと顔を出した男の名を呼んだ。
「伴」
「おう、星、奇遇じゃな。お前が一人街を歩いているとは珍しいのう」
ニコニコとえびす顔で伴と呼ばれたスーツ姿の男は飛雄馬に手を振る。
「うむ、ちょっと所用でな。伴こそどうした」
「取引先に行ってこれから家に帰るところじゃわい。どうじゃ、暇なら少し家に来んか」
「………」
言われ、飛雄馬はちらと手首に嵌めた腕時計を見遣る。宿舎の門限にはまだだいぶ時間があった。
とは言え、オフシーズン真っ只中、宿舎住まいの飛雄馬であるが、門限などあってないようなものだ。
年の瀬迫る十二月下旬。世間ではやれクリスマスだ、正月だと忙しなく、街行く人の格好も言うまでもなく真冬のそれで、一人街を行く飛雄馬とて例外ではなく、厚手のコートをしっかりと着込んでいた。
「少しだけなら」
しばし考えた飛雄馬だったが、顔を上げると伴の顔を見据え、頷く。
「おう、そうと決まれば、運転手さん、車を停めてくれい」
仰せのままにと言わんばかりに車はその場に止まり、伴はドアを開けてやると尻の位置をずらし、飛雄馬が乗るスペースを空けてやった。飛雄馬は車に乗り込んで今まで伴が座っていた場所に腰を下ろすと、ドアを閉める。
そうすると、車は再び動き出した。
飛雄馬の冷えた体が車内の暖房によってじんわりと暖まる。さすが伴重工業の重役と言ったところか。
乗っている車も庶民の大衆車とは訳が違う。車内にはきちんとカーエアコンが備え付けられているのだった。
「世間はクリスマスムード一色じゃのう」
「クリスマス?ああ、そうだな」
飛雄馬は窓の外に目をやり、デパートの外壁一面に貼られた大きなクリスマスツリーの装飾を仰いだ。街を行く子どもたちも綺麗に包装された箱を手に満面の笑みを浮かべているのが見て取れる。
「宿舎で、何かやるんかいのう」
「皆郷里に帰ったり何だのと忙しいようだ。おれも一人で宿舎にいてもと思い街に出てきたはいいが、却って気が滅入ってしまった。フフ、クリスマスなどと言う浮かれた行事ごととは無縁の家で育ったからな、どう過ごしたらいいか分からんのだ」
「あ………う、」
失言だった、と伴は閉口し、口元に手を遣る。それは伴が飛雄馬の高校時代からの親友であり、はたまたその家族構成、彼の父のことを嫌というほど、十分すぎるほど知っているからだ。
星飛雄馬に野球以外のことを何一つ教えず、利き腕までをも強引に変更させておきながらその野球さえも左腕と共に取り上げたあの父を。
「……まあ、いい。昔のことだ。それで、お前の家に行くのはいいが何をする気だ?おばさんの話し相手か」
薄く笑みを口元に湛えると、飛雄馬はばつが悪そうに目を瞬かせる伴を見遣り、そう尋ねた。
「む、その、だな。う……ん」
ごにょごにょと言葉を濁し、伴は顎を撫でる。暖房のせいか彼の顔は耳まで赤く染まっていた。
「どうした?」
「くっ、くっ、クリスマス、パーティーを、せんか?うちで」
「クリスマスパーティー?」
伴の口から飛び出した思いもよらぬ単語に飛雄馬は目を丸くする。運転手もぶっ、と思わず吹き出してしまったようだった。
「な、何年か前、お前、宿舎に花形や左門たちを呼んだことがあったじゃろう。結局、誰も来ず、悲しい結果に終わってしもうたが、今年は、わしと、一緒に、その」
「フッ、フフフッ……クリスマスパーティーか。ハハハッ、そうか」
「そ、そんなに笑わんでもええじゃろう……」
よほど恥ずかしいと見え、額に汗を浮かべ、伴は口をもごもごとやる。
「……すまん。笑うつもりはなかった。ありがとう」
「………」
臍を曲げたか、伴はツンと飛雄馬から顔を背け、窓の外を見遣る。飛雄馬はその様がおかしくて、また小さく吹き出すと、クックッと肩を震わせ笑った。
そんなやり取りを繰り広げているうちに、車は伴の屋敷に到着する。
伴は運転手に車を駐車場に停めたら今日は帰ってもいいぞい、と命じて、飛雄馬と共に屋敷へと入った。
すかさず、伴と飛雄馬の顔馴染みの老女が顔を出し、お待ちしておりましたとニコニコと二人を出迎えた。
彼女に促されるままに、ダイニングへと向かい、テーブルいっぱいに乗せられた料理に飛雄馬は目を瞬かせる。
大きなホールケーキやら鶏の丸焼きやら、到底二人では、いや、おばさんを入れても食べきれる量ではない。
しかして、伴が長年の付き合いであるおばさんに頼んでこれだけの種類と量の料理を用意してくれたという気持ちが、飛雄馬には嬉しかった。
「本当はどこかのレストランで、とも思ったんじゃが、星はそういうのは好かんだろうと思ってのう」
「………」
飛雄馬は鼻の奥がツンと熱くなるのを感じつつ、目を閉じる。
「さあ、あとはお二人でどうぞ。邪魔者は消えますのでね」
「あ、いや、おばさんも、是非」
そそくさとその場を去ろうとする老女を引き留め、飛雄馬は椅子に座る。
そうして、三人はそれこそ腹がはちきれんばかりにご馳走を食べ、ようやく一息ついた。老女は先に休ませて頂きます、と膨れた腹を抱えフラフラとダイニングを出て行く。程よくアルコールも入り、腹も膨れたせいか伴はうとうとと椅子に座ったまま船を漕ぎ出している。
「伴、寝るなら寝室に行け」
「ばかをいえ〜星ぃ〜〜おれはよってにゃいぞ〜〜」
「…………」
また始まった、と飛雄馬はビールを啜りつつ管を巻き始めた伴を睨む。どうも伴宙太という男は酒に酔うと変に人に絡むようだ。
「星ぃ、ほら、あ〜〜ん」
「やめろ、もう食えん」
皿に残ったケーキにフォークを刺し、伴はそれを飛雄馬の口元に掲げた。
「にゃに〜〜おれのケーキがくえんじゃと〜〜」
「伴、いい加減に――」
言いかけた飛雄馬だったが、伴がにこーっとそれはそれは嬉しそうに微笑んだもので、面食らい、眉間に寄せた皺を緩める。
「ふふ、星よお〜〜楽しかったか?お前が久しぶりに笑っとるのを見ておれも嬉しくてのう、ふふ、つい飲みすぎてしもうたわい」
「………」
「星〜星よう〜メリークリスマス」
ヘラヘラと笑みを浮かべて笑う伴に毒気を抜かれ、飛雄馬は伴の手にしたフォークからケーキを頬張ると、小さく笑んでみせた。
「メリークリスマス、伴」
「むにゃむにゃ……星……」
そのままテーブルに突っ伏し、いびきをかきはじめた伴を一先ず寝室に押し込んでからテーブルの片付けをしよう、と飛雄馬は彼の腕を取ると、己の首から肩へと回すようにして持ち、伴の体を抱え上げた。
酔っ払いの体と言うのはどうしてこうも重いのか、と飛雄馬はやっとのことで伴を彼の寝室まで連れていき、押し入れの中から布団を出し、畳の上に敷いてやった。
既に畳の上で大の字になり高いびきをかいている伴の体の上に掛け布団だけを掛けてやり、片付けをするために一度付けた部屋の明かりを消し、そこから出て行こうとした飛雄馬を、寝ていたはずの伴が呼び止める。
「すまん、起こしたか。あのままだと風邪をひくと思って」
「星、プレゼントはないのかのう」
「プレゼント?ああ、急だったからな。フフ、次会うときは何か買っておくさ」
「………星がええのう」
「お前は酒が入るとだめだな」
「おれは酔ってない!断じて酔ってなどはおらん!」
「………今日の礼は必ずする。嬉しかった」
「星」
うまい話には裏がある、とはよく言ったものだな、と飛雄馬は開きかけた部屋と廊下とを仕切る襖を閉め、いつの間に布団の上に乗ったのか体を起こした状態でこちらをじっと仰ぎ見ている伴を振り返った。
「テーブルの片付けをしてからではだめか」
「だめじゃい。そのまま帰る気じゃろう」
「………」
飛雄馬は伴のそばまで歩み寄って、彼の布団の傍らに膝を着く。と、伴の指が飛雄馬の頬に触れ、そのまま大きな掌が彼の顔を包んだ。
「パーティーは楽しかったか」
「ふふ、最後にこれがなければいい思い出になったかもしれんな」
「う……」
「冗談だ」
飛雄馬は己の頬に触れる伴の手を握ってクスリと笑みを溢す。
すると伴は飛雄馬の顔に自分の唇を寄せたかと思うと、何の躊躇もなく彼の唇に口付けた。うっ、と短く呻いた飛雄馬の口内に唾液を纏った舌が滑り込む。
「っ……ん、んっ」
小さく喘ぐ飛雄馬の頬から手を離し、伴は彼の両肩をそれぞれの手で掴むと、布団の上にどっと組み敷いた。弾みで唇が外れ、飛雄馬は微かに潤んだ瞳で伴を見上げる。
アルコールのせいか、肌が変に熱を持つ。星、と熱っぽい声で伴は飛雄馬を呼び、再び彼の口に唇を押し当てた。
「あ、っ、伴……」
顔を振り、口付けを拒んだ飛雄馬の首筋へと標的を変え、伴はその薄い肌に吸い付く。あっ、と高い声を上げ、反らした顎下へ伴は唇を寄せた。
「跡っ、付けるな……」
「なんでじゃい。オフシーズンじゃろう。誰にも会わんのなら気にすることはない」
癪に障ったか、伴は低い声でそう言うと飛雄馬の肌を吸う力を強める。すると青白く血管の浮く肌が内出血を起こし、赤い跡が飛雄馬の喉元に浮かび上がった。
「う、うっ……」
体の下に引かれた布団のシーツを握り締め、飛雄馬は声を漏らす。
すると伴は彼の腹を締めているベルトを緩め、スラックスの中からシャツを引き出したかと思うと、その裾から手を入れ、直に飛雄馬の腹を撫でた。
ぞくっと飛雄馬の肌が粟立って、震える。そうして伴は飛雄馬のシャツをたくし上げ、腹から胸までを己の眼下にさらけ出すと、体を足元の方へほんの少し移動させてから彼の腹へと口付けた。
ここでもまたちゅっ、ちゅっと変に音を立てつつ肌に吸い付く。飛雄馬の腹に力が入って、その背はぐっと仰け反った。
「っ、っ………」
口元に腕を乗せ、飛雄馬は声を出すのを堪える。しかして、伴の指が、唇が、舌が肌をなぞって、ゆるゆると這って飛雄馬はんっ、と鼻がかった声を上げた。
伴の手が飛雄馬の腹から脇腹を撫でたかと思うと、ふいにその唇が彼の胸へと触れる。ビクッ、とその刺激に飛雄馬の体は大きく跳ね、シーツを握る指にも力が篭った。すると伴は飛雄馬の乳首ごとその周りの皮膚をちゅうっと吸い上げ、尖った突起を舌で転がした。
「いっ、っ――く、ぁ、あっ」
しばらく突起を舌の表面で撫で回していたかと思えば、今度は舌先でそれを押しつぶす。飛雄馬の臍の下は完全に出来上がっており、スラックスの中で解放を待ち侘びるかのようにその下着を持ち上げている。 けれども、伴はそこへは一切手を触れようとはせず、彼の胸ばかりを責め立てる。
それどころか、もう一方の乳首へと伴は手を遣り、ふっくらと膨らんでしまっているそれを親指と人差し指とで抓むと、こよりを縒るように指で転がした。
「はっ、っ………!!ッ、」
あまりにも強い刺激に勃起した逸物がぎゅうっと下着とスラックスを押し上げ、飛雄馬は顔をしかめる。
「ば、伴っ……」
「どうした、星よ」
「下、っ……苦し、……」
「………」
言われ、伴は飛雄馬の穿いているスラックスのボタンを取り、ファスナーを下ろす。
下着にこそ未だ包まれているが、勃起しきり、身につけている布地をぐっと押し上げている逸物が飛雄馬の腹に留まるゴムの部位をめくってやれば、そこから勢いよく顔を出す。
その始終を見届けてから、伴は再び飛雄馬の乳首を強く吸い上げる。
「ぅあ、っ……!!」
ビクッと逸物も飛雄馬が喘ぎ、背を反らしたのと比例するかのように震え、その鈴口から先走りを彼の腹へと滴らせた。
「星、声を出せい。どうせ聞こえやせん」
飛雄馬が左右に首を振り、拒絶反応を示したところで伴は血管の浮くほどに勃起している彼の逸物を握り、それを上下にしごいた。口では飛雄馬の乳首を責めつつ、手は彼の逸物を弄ぶ。
「はぁ、あっ……っ――!っ」
弧を描くように胸の突起を舌でねぶり上げ、伴は飛雄馬の亀頭部位からその裏筋にかけてを掌で撫で擦る。
「っぐ、ん、んっ……ッ」
「星、手を離せ。イキたいじゃろう」
「………ひ、ぅ、うっ」
「…………」
しかして尚、飛雄馬は顔を振り、口に当てる腕を離そうとはしない。
すると伴は口に含み、どちらかと言えば柔らかな刺激を加えていた乳首へとなんの前触れもなく歯を立てた。噛まれた箇所から甘い痺れが全身に走って、飛雄馬は伴の掌の中で白い欲をぶちまける。
「っ………ふ、………うっ」
全身に汗をかいて、飛雄馬は腰を揺らし、伴の掌へとすべてを吐き出した。
「強情っぱりじゃのう」
言って、伴は汚れていない手で飛雄馬のスラックスと下着とを彼の足から抜き取って、そのまま彼の開いた足を脇に挟むようにして身を寄せる。
未だに淡くぴりぴりとした痛みの残る乳首と、射精の余韻に飛雄馬は喘ぎつつ、涙に濡れた瞳を伴へと向けた。
「おれは星の声が聞きたいぞい」
「…………」
伴はジロリと己を睨む瞳から目を逸らし、飛雄馬の射精したばかりの逸物、そのすぐ下部に位置する陰嚢より更に数センチ下にある後孔へと飛雄馬の精液を塗りつける。
「ん、ン、っ……ん、ぅ」
刺激に慣れさせるべく、後孔の上で円を描き、伴は飛雄馬の様子を伺っていたが、ふいにそっと中指を飲み込ませた。
「……っ、ぐ」
ゆっくりと中を撫で回し、入り口を解していた伴のネクタイを飛雄馬は掴み、一息に己の方へと引き寄せる。
「ほ、星っ……」
驚き、妙な声を上げた伴の唇に飛雄馬は己から口付け、彼の首へと腕を回す。間髪入れず、舌を彼の口の中へ挿入させて、熱く濡れた互いの舌同士を絡ませる。
「伴、代わろう……」
「か、代わるとは?」
赤ら顔で言う伴の体の下から這い出て、飛雄馬は不安そうにこちらを見上げてくる彼に布団の上に寝転がるように言った。
「…………」
言われるがままに布団を背に寝転がった伴の腹の上に膝立ちで跨って、飛雄馬は後ろ手て彼のスラックスのファスナーを開け、下着の中から逸物を取り出した。
「ほ、星」
「聞きたいなら、聞かせてやるさ」
伴の逸物に手を添え、飛雄馬は後孔にそれに宛てがい、ゆっくりと腰を下ろす。
「あ、う、うっ……星っ」
「っ……あ、ッ」
伴を根元までゆっくりと体内に埋めて、飛雄馬はぶるぶるっと一度大きく震えた。腹の中が彼の形に馴染むまで、飛雄馬は緩く腰をくねらせる。
すると、彼の粘膜が逸物を締め上げ、伴は小さく喘いだ。
飛雄馬はふぅっ、と息をひとつ吐いてから伴の腹に手をつき、尻を上げ、一度半ばまで彼の逸物を体の外に出してから腰を落とし、再び体内へと埋める。狭まった肉壁をぐりぐりと伴の逸物がこじ開け、奥を抉った。
「あ、っ……ンあ、あっ」
項垂れ、飛雄馬は声を上げる。そうして、腰を上下させ、伴の逸物を己の粘膜でしごき上げ、また自分の良い位置を彼の男根で擦った。
「星っ、出るっ……」
「………」
言われ、飛雄馬は腰の動きを止める。射精寸前で止められ、伴は信じられないと言うような顔をして飛雄馬を仰ぐ。
「そう、焦るな伴よ……」
今度は上下ではなく、前後に腰を緩やかに振られ、伴は歯を食い縛った。
「……星ぃ」
「ん、ん……」
目を閉じ、飛雄馬は己の腹の中を優しく擦る刺激に酔いしれる。
「堪らん、星……動いてもええかのう」
「……ふふっ、伴、まあ待て」
「し、しかし……」
飛雄馬は体を倒し、伴の唇に口付ける。ちゅっと唇を啄んで、はあっ、と飛雄馬は吐息を漏らした。
「たまには、こういうのも悪くはないだろう」
「辛抱堪らんのじゃ、星……生殺しじゃあ」
「お前の腰をガンガンぶつけられる身にもなってくれ」
「む、う……」
伴は唸って、布団の上に投げ出していた両足、その膝を立てるや否や、下から飛雄馬の体を突き上げた。
「あ………っ!」
衝撃が一気に背筋を駆け抜けて、飛雄馬の思考が止まる。そのまま伴はがつがつと下から彼の尻を掴んで体内を抉って、内壁を擦り上げて、己の欲を満たす。
「っ、伴……!!加減、しっ……」
顔をしかめ、飛雄馬は口元にやった己の指を噛む。
「星、やめるんじゃい、指は」
「あ、あっ……あ、いっ、」
指を外させようとした伴だったが、あまりの快感の強さゆえか飛雄馬の口からは指が離れ、声が上がる。伴は彼の腕をそれぞれに掴んで、ぐりぐりと腰を飛雄馬の尻へと押し付ける。
「いっ、く、伴……!」
「ああ、いったらええ……星」
びくん、と飛雄馬は大きく震えたかと思うと、全身を小さく戦慄かせ、唇を噛んだ。そのまま伴も飛雄馬の中にて果て、二人、繋がったまま荒く激しい呼吸を繰り返した。
「う、っん……」
立ち上がり、腹の中から伴を引き離す飛雄馬の中から逸物に掻き出され、精液が溢れ、伴のスラックスを汚した。
「あ………」
「ん?ああ、ええんじゃい。どうせ皺だらけになってしもうた。クリーニングに頼むから星が気にすることじゃないぞい」
「………」
飛雄馬はふと、下着とスラックスとを穿きながらやたらに障子越しではあるが外が明るいな、と疑問に思い、ベルトを締めると障子を開けた。するとどうだ、窓の外には雪がちらついているではないか。
「伴、雪だぜ」
「雪?どうりで寒いはずじゃい」
「クリスマスに雪とはおあつらえ向きだな」
「星よ、どうせシーズンオフ中だ。夜が明けたら温泉にでも行かんかあ。体を休めるのも練習の内じゃぞ」
「………ああ」
窓の外、綺麗に整えられた伴の屋敷の日本庭園に降り積もる雪を見下ろしつつ、飛雄馬は返事をする。
「ほんとに聞いちょるのかあ」
ガバッと飛雄馬の身体を背後から抱き締め、伴は尋ねた。飛雄馬は苦笑しつつ、聞いとるさ、と答える。そうして二人、顔を見合わせ笑ってから、どちらともなく唇を重ねた。