頼みごと
頼みごと 各々が風呂で汗を流したり、食事を摂る中で飛雄馬と伴は一先ず体を休めようと部屋に入った。消灯時刻は決まっているものの、練習を終え帰寮したあとは選手一人ひとり比較的自由な時間を過ごしている。
とは言え、入団したばかりの伴と飛雄馬は入浴後の風呂掃除が待っていたりとあまり先輩方のように好き勝手するわけにもいかず、皆が風呂に入り終えるまでふたりは部屋で時間を潰すことも多かった。
ふう、と飛雄馬はユニフォーム姿のまま己に割り当てられたベッドに仰向けに寝転がって、大きな溜息を吐く。
疲れたのう、と言う伴の声が耳に入って飛雄馬は、ああ、と目を閉じたまま頷いた。
すると、自分が横たわるベッドが軋んで何やら人の気配がしたために、飛雄馬が眠気のせいでやたらに重いまぶたを上げると目の前に日に焼けて真っ赤になった伴の顔があった。
「ふふ、どうした。ベッドを間違えてないか」
「ま、間違えとらん!その、なんだ、ええと」
「………今か?」
要領を得ないことをもごもごと呟く伴に飛雄馬はくすっと微笑んでからそう、尋ねる。
「だめ、かのう」
「…………だめと言ってもするだろう」
飛雄馬は伴の体の下から上体を起こしてから汗に濡れた帽子を脱ぐと、ベッドの上にそれを置くなり彼の太い首に腕を回す。
そうすると、伴も次に何をされるかというのがわかっているらしく、目を閉じ唇を尖らせて来たものでまだ目を開けたままの飛雄馬はその顔を見るなりぷっ!と吹き出した。
「な、なんじゃい!?」
「いや、なに。伴の顔があんまりおかしかったから。ふふふ……」
「気にしとることを言いおって」
ぷいと顔を逸らして伴はそんなことをぼやく。
ああ、違う。そういう意味じゃないと飛雄馬は尚もくすくすと笑いつつ、伴の首をぎゅうと抱き締めた。
「気休めを言うな。星や花形のようにハンサムじゃないことくらい分かっとるわい」
「おれは伴の顔、日本一、いや、世界一格好良いと思うぜ」
「うむう……」
「ふふ、自信持てよ」
顔を背けたままの伴の唇の端に飛雄馬は口付け、ニコッと微笑む。
「まったく星には敵わんのう」
伴もまた飛雄馬と同じく表情を緩めると、彼の体を抱き締めつつ口付けを返した。
「ふ………」
汗のせいかほんの少ししょっぱい唇が触れて、飛雄馬は小さく震えた。途端、伴の腕の力が強くなって飛雄馬も彼の首にしがみつく。
と、飛雄馬の唇を割り、伴の舌が口内へと入ってきて上の前歯の裏側を撫でた。
かと思うと、伴は口付けを与えたまま着ているユニフォームのボタンを外そうとしてきたために、飛雄馬は待った、と静止をかけ、自分で脱ぐから、と上からひとつずつボタンを外していく。
「そう、あまりじろじろ見ないでくれ……」
「あ、う、す、すまん」
その様を伴がじっと見ていることに気付いて飛雄馬は彼を睨んだ。
「伴も脱げよ」
「えっ!?おっ、おれもか」
「おれだけ脱がせる気か?」
「う、うむ……」
何やら腑に落ちない様子であったが、伴も飛雄馬と同じようにユニフォームのボタンを外していき、アンダーシャツ1枚となる。
「………」
汗に濡れ、肌に貼り付いたアンダーシャツを一足先に飛雄馬は脱ぎ去るとベッドの下へとそれをゆるりと落とした。
真っ黒に日焼けした腕と顔、それに相対するかのように普段は服の下に隠れている飛雄馬の白い腹や胸が目の前に現れて、伴の心臓が変に跳ねる。
これまでに何度も着替えの際や入浴のときに目の当たりにしたというのに、いざこうして対面すると妙に艶かしく伴の目には映った。
「ほ、星」
名を呼ばれ、ベルトを緩めようとしていた飛雄馬は伴の顔を仰いだものの、その直線上にある彼の下腹部に視線を奪われ、ビクッと体を跳ねさせる。ユニフォームのズボン、その股間の位置が大きく膨らんでいて飛雄馬はごくんと生唾を飲む。
「伴……」
飛雄馬は自身の下腹部もまた、彼と同じように熱を帯びていることを自覚しつつ、ベルトを緩め、ズボンのボタンを外すとファスナーを下げた。伴の視線が痛いほどに感じられて、飛雄馬の腹の中は切なく疼く。
その視線に晒された胸の突起でさえ立ち上がっているのが分かる。
ズボンを下ろしつつスパイクから足を抜き、ソックスとストッキングを脱いで、飛雄馬は遂にスライディングパンツ1枚となった。
「星……」
熱っぽい声で伴は飛雄馬を呼んで、彼の元ににじり寄ると唇にそっと口付け、その体を抱くようにして支えつつベッドの上に押し倒す。
興奮し、体温が上がってじわりと互いの肌に汗が滲む。
「あっ、伴………!」
飛雄馬がベッドに背をつくなりその胸元に伴は吸い付いて、彼のパンツの中に腹を撫でるようにして手を差し入れ、中から立ち上がった男根を露出させた。臍の位置まで飛雄馬のそれは首をもたげ、とろりとその先から先走りを腹へと滴らせる。
伴はそのまま飛雄馬の胸から首筋へと口付けを落としつつ、彼の男根を握りそろそろとそこへ刺激を与え始める。
「は、っ………ん、」
伴の手が上下に飛雄馬の逸物を擦るたびに、その鈴口からは先走りがとろとろと溢れた。
飛雄馬はぴく、ぴくと伴の手の動きに合わせ体を震わせ、目の前の彼の名を呼ぶ。
「星、だめじゃい……辛抱たまらん」
「ん………」
縋るように伴はそう言って、飛雄馬の男根から手を離すと彼のパンツに手をかけそれをずり下ろす。飛雄馬も膝を曲げ、彼の手伝いをするかのようにパンツから足を抜いた。
そうして、伴はユニフォームの尻ポケットに部屋に帰ってきたときに入れた軟膏のチューブを取り出すと蓋を開け、中身を適量指に取ってから指の熱でそれを柔らかく伸ばしつつ、飛雄馬の足の間へと塗り込んでいく。
飛雄馬の立てた膝がゆらゆらと揺れて、体が仰け反る。伴の太い指が飛雄馬の腹の中を弄って、丹念にそこを解していく。
「っ、あ、あ………」
背中を反らし、喉元を曝け出しながら飛雄馬は吐息混じりの嬌声を上げる。
伴は飛雄馬から指を抜き、ベルトをカチャカチャとやってからユニフォームのズボンのボタンを外し、ファスナーの位置から男根を取り出した。
「……………」
自分の開いた股の間から飛雄馬は今から自身を貫く彼のそそり立つ逸物を見遣って、ぎゅうっと身を委ねるベッドのシーツを握り締める。
ぎしっ、とベッドを軋ませ、伴は飛雄馬のそばに寄ってから彼の尻へと己の男根を充てがって、腰を押し付けた。
解され、刺激に慣らされた飛雄馬の中へと伴が内壁をその形に馴染ませつつゆっくりと入ってくる。
「あ、っ………い、」
「い、痛いか?」
その声に驚いたか伴は腰の動きを止めるが、飛雄馬は大丈夫と呟いて、うっすらと閉じていた目を開けた。伴は飛雄馬の足を脇の下に抱え込んでから、更に奥へと自身を突き進めていく。
腹の中が伴でいっぱいになって、飛雄馬は大きく息を吸った。
「しばらく、こう、していたい」
根元まで伴を受け入れて、飛雄馬は囁く。
開いた足、その腿に触れる伴の腹が暖かくて、飛雄馬は思わず身震いし、腰を揺らす。
それが刺激となったか、伴は小さく呻いて飛雄馬の上に覆いかぶさるようにしながら彼の体の脇に手をついた。
伴の大きな腹が腹の上にぐっとのしかかって、飛雄馬は声を漏らすが、その重さも熱も彼からしてみれば変に心地よかった。
飛雄馬は自分の体の脇に置かれた伴の腕に自分の手を絡ませて、彼の顔を仰ぐ。
試合のときのように馬鹿みたいに真剣な顔をしているのがおかしくて、ふふっと笑うと、伴がにゃにがおかしい?と尋ねてきたもので、飛雄馬は、何でもないと返した。
「…………」
身を屈め、伴は飛雄馬の額に口付けてから腰をそうっと使い始める。
「う、っん………」
伴の腕に爪を立て、飛雄馬は腹の中を撫でる熱に酔う。ぶつかる腹と腿が音を立て、ベッドが伴の腰の動きに合わせて軋んだ。
腰の動きが段々と速くなるにつれて、伴の呼吸もまた荒くなる。
「あ、っう、伴、もっと、ゆっくり………」
「それは無理な注文じゃい、星……」
囁いて、伴は一度腰を引いてから深く中を穿つ。より深い場所を伴の男根が擦り上げて、飛雄馬は体を仰け反らせ、声を上げた。
その逃げた飛雄馬の腰を伴は追って、グリグリと己の腰を押し付ける。
眉間に皺を寄せ、飛雄馬の頬に流れる涙を唇で掬い取って伴は射精のために腰を引く。
「このままっ………伴、このまま、いけ」
「星……!?」
「ん、ん………ッ、う」
伴の男根の脈動をその身に受けつつ、飛雄馬はぎゅうっと彼の腕にしがみついた。
「………よ、よかったんかのう。中に出してしもうて」
「…………」
ぐったりとベッドに体を預け、飛雄馬は白い腹を上下させ微かに開いた唇から吐息を漏らす。 伴は飛雄馬から離れると、自身の下腹部を拭ってから衣服の乱れを直した。
「ふ……あとは汗を流して寝るだけだからな」
「それはそう、じゃが」
「おれがいいと言ったんだ。伴が気にすることじゃない」
投げ出していた足を曲げ、飛雄馬はゆっくり体を起こすとベッドの端に座っていた伴を呼ぶ。
「な、なんじゃい」
「もう、風呂、いい頃だろう。さっさと片付けて夕飯を食べて明日に備えようぜ」
「………おう」
伴は飛雄馬の腕を取り、その体を強く抱き締める。まったく、さっきの伴の台詞じゃないが伴には敵わないな、と飛雄馬は伴の汗の染みたユニフォームの肩へと顔を埋めつつ微笑む。
消灯まであと少し。廊下を行く声も足音もほぼしなくなったのを見計らい、ふたりは入浴と夕食のために既に眠っているであろう先輩方を起こさぬようそっと部屋を出た。