セーラー服
セーラー服 建ち並んだ長屋のどこからともなく夕食の良い匂いの漂う時分、一徹は日雇いの仕事を終え、くたくたの状態で自宅へと帰ってきた。
ただいま、と声を掛け玄関の戸を開けた彼の目に飛び込んできたのは、この春高校生になったばかりの息子と、家計のやりくりや家事全般を任せている娘の姿であったが、その息子の方の格好が問題であった。
あろうことか、一徹の一人息子である飛雄馬と名付けた彼がどうやらその姉・明子が中学に通っていた際に着用していたセーラー服を身につけていたのだから驚きである。それこそ一徹からしてみれば、青天の霹靂とでも言おうか。
二人は一徹の顔を見るや否や、あっ!と言う表情をして、明子はすっくと立ち上がったかと思うと、回覧板を回してくるわねと言うなりそそくさと長屋を出て行った。
一人残された飛雄馬は体裁悪く、その場に立ったまま視線ばかりをキョロキョロと動かしていた。
弟である飛雄馬は年齢の割に小柄であるのに対し、姉の明子の方は割りかし中学生時代から背も高く発育も良かったせいか、高校生である飛雄馬の体に明子のセーラー服はまるで誂えたかのようにピッタリである。しかも、白靴下を履き、胸元のエンジ色のスカーフまできちんと揃えてあり、大方家の片付けをしていた明子がたまたま中学時代の制服を見つけ、戯れに飛雄馬に着せたのだろう、と一徹は思った。
「あ……とうちゃん………これは、ねえちゃんが」
玄関先でゲートルを解き、地下足袋を脱ぐ一徹に飛雄馬は震える声で弁解をする。
「ごちゃごちゃと御託を並べる前にさっさと脱いだらどうだ。馬鹿らしいと思わんのか、明子に言われるがままにそんなヒラヒラとした女学生の格好をしおって」
「………!」
かあっ、と飛雄馬の頬が羞恥と怒りのために真っ赤に染まる。
一徹は裸足になると、日に焼け色褪せた畳を踏み締め、もたもたと服を脱ぐのに手間取る飛雄馬の元に歩み寄り、彼の左の頬を右手で張った。乾いた音が響いて、飛雄馬はどどっと畳の上に尻餅をつく。
その際、膝下ほどの丈のある紺色をしたスカートの裾がめくれ、飛雄馬の白い太腿が白電球の下に晒される。
その白い腿に飛雄馬が頬を張られた際、歯で口内を切りでもしたか、赤い鮮血が俯く飛雄馬の口からぽたりと落ちた。
「っ……」
飛雄馬は口元を手の甲で拭ってから、再び身に纏う紺色の衣服を一刻も早く脱ぎ去るべく、上着の裾に手を掛ける。しかして、さっと目の前に影が差したために、何事かとばかりに顔を上げた。と、そのまま唇を乾燥した現場での日雇い仕事のせいか、一徹のかさついた唇で塞がれる。
「あ……?」
驚き、声を上げたために飛雄馬が開いた唇の間を縫って一徹の舌は難なく彼の口内へと滑り込んだ。淡い鉄の味が一徹の舌の上にも乗って、飛雄馬は傷付いた口内を父の舌が這い回る痛みに顔をしかめ、畳の目に爪を立てる。
それでも顔を振って逃げようともがく飛雄馬の顎先に一徹は手を遣って、口付けのせいか脱力し、尻餅をついた状態から顎先を押さえられているせいでそのままずるずると背中を畳に預けるようにしながら後ろに倒れ込んだ息子の上に彼は覆いかぶさると畳に両手をついた。
「は………ふ、」
一徹を見上げる飛雄馬の瞳は潤み、その口の端に光る唾液には赤が混じっている。
紺色をしたプリーツスカートのはだけた裾から覗く白い腿の何と官能的なことか。
帰宅し、目に入った飛雄馬の格好に男のくせに何たる醜態と怒りさえ覚えた一徹であったが、今や最早飛雄馬が女学生の出で立ちをしているという背徳感と、その非日常さの醸す雰囲気に欲情さえしていた。
飛雄馬はゆっくりと目を瞬かせ、一徹を仰ぐ。張られた頬は赤黒く腫れつつもある。
一徹がすっと畳についていた手を動かすと、飛雄馬はビクッ!と体を強張らせ、腕で頭を庇うような仕草さえしてみせたが、彼が何もしてこないと見るや、体の緊張を解いた。一徹は跨る飛雄馬の足を開かせ、その間に両膝を入れると白い靴下を履いた足を指先でそうっと撫でる。
うっ、と飛雄馬の口から高い声が漏れ、彼は父の手から逃げるかのように膝を立てる。ハラハラと飛雄馬の腿に乗っていたスカートの裾が畳の上に滑り落ち、彼の股関節辺りまでを電球の元に晒すこととなったのだが、そこで初めて一徹は飛雄馬が下着を身につけていないことに気付く。
「あっ、とうちゃん……」
「………」
飛雄馬もそこでやっと自分がスカートの下は素肌のままであると察したか、股ぐらの辺りをスカートの上から手で押さえた。
しかして、男の体にはその興奮や快楽の度合いを如実に物語る器官が付いており、飛雄馬が手で覆い隠した箇所はその形に沿ってスカートのひだを持ち上げている。
一徹はそのまま、スカートの上から飛雄馬の布地を持ち上げる部位──即ち、逸物に手を添えると、それをスリスリと上下にしごいた。
「う、あっ!」
最頂部付近を掌に包み込み、布地ごと揉み込んでやると飛雄馬は口元に手を遣り、ぶるぶると体を大きく震わせる。
紺色のスカートの男根の最頂部が当たるところが濃く変色し、そのシミは段々と広がりを増す。
「あ、っ、あ……とうちゃん、ん、っ」
腰が跳ね、畳の上で飛雄馬の爪先は切なげにもがく。時折、閉じた目を開け飛雄馬は懇願するような瞳を一徹へと向けるが、彼は達しそうになると手の動きを弱め、その反応を楽しんでいるようでもあった。
「っく、ん……ン、う、うっ」
もうすぐそこまで絶頂の波は来ていると言うのに、飛雄馬が達しそうになると一徹の指はまるで見当違いの場所をなぞる。
先程から幾度となく飛雄馬は声を上げ、がくがくと腰を揺らしている。
けれども、射精に至ることは一度も許されず、ただもどかしさに喘ぎ、その瞳からは大粒の涙を零し、あとほんの少しで届きうる絶頂を求め身をよじった。その度にスカートのひだは揺れ、その上着は汗をかいた肌に纏わりつく。
いきたい、苦しい。どうして、とうちゃん。飛雄馬の先走りでべとべとに濡れ、その逸物にスカートがぴたりと張り付く。 「さて、こういうときは何と言えとわしは飛雄馬に教えたかな」
「ア……っ、っ……う……」
足の間から絶え間なく与えられる感覚が全身を支配し、飛雄馬の頭をおかしくさせる。もうこの切なさ、歯痒さから解放されると言うのならば、何でもしてやるという心境にさえなっていた。
「やっ……嫌だ……とうちゃ……っ、いじわるっ、しないで」
飛雄馬の立てた膝は震え、その瞳は虚ろである。
「意地悪じゃと?いつからそんな大層な口をわしに対して利けるようになったんじゃ」
ぬるぬると逸物をしごいていた手を止め、一徹は飛雄馬に尋ねる。
「っ、う〜〜!!」
飛雄馬は腰を揺らし、先をねだる。このままだと気が狂ってしまいそうだ。立てた膝をひくひくと痙攣させ、飛雄馬は手を止めた一徹を仰ぐと、とうちゃんの手でいかせてください、と快楽と共に教え込まれた通りに、彼の望む言葉を吐く。
するとにわかに一徹はスカートをめくると、じかに飛雄馬の男根を掌に握り込んで、彼を絶頂へと導いた。布越しではなく、ダイレクトに刺激と手指の感覚が伝わって飛雄馬は体を仰け反らせ、もたらされた快楽に身を委ねる。
その際、飛雄馬の体液は紺色の制服へと見事に飛び散って、それは胸元付近まで付着した。
一徹は焦らしに焦らされ、やっとのことで迎えた射精の余韻に浸ったままの飛雄馬の唇に口付けつつ、彼の着ている制服の上着、その裾から中に手を差し入れる。
上着をたくし上げた先に現れた、ぷっくりと膨れ、立ち上がった胸の突起を指で抓みあげてやれば、飛雄馬はびくっと体を震わせ、閉じていた目をゆるゆると開いた。
一徹は片方の突起を指で弄びつつも、口付けを中断するともう片方へは顔を寄せ、その固く尖った突起を口に含んだ。
それを吸い上げつつ、舌先で転がしてやれば飛雄馬は白い喉を晒して、だらしなく声を上げる。
そうして、乳首を責め上げたまま、一徹は自由の利く右手を飛雄馬の左足の膝裏に入れ、ぐっと彼の腹に腿を押し付けさせるようにして足を開かせた。
それから一徹は体を起こすと、履いているズボンの前を下ろして、腹に付かんばかりに反り返る逸物を取り出すや否や、飛雄馬の秘部へとその先から溢れる先走りを塗り付ける。
「あ、っ……ん、と、うちゃん」
飛雄馬は腰を反らし、一徹をいざなう。吸い上げられた乳輪辺りの皮膚は赤く染まり、制服の裾からちらりと顔を覗かせている。一徹は己の男根に手を添えると、そのまま飛雄馬の中へと己を飲み込ませた。
「っ、あ………あ、あ〜〜っ」
腹の中を一徹の逸物が己の形に作り替えていく。飛雄馬は開きっぱなしの口から声を上げ、畳に頭頂部を擦らんばかりに背を反らし、父を受け入れる。
腰をがっちりと押さえ込まれ、その腹の中は父のモノでいっぱいになった。
体内を引きずる一徹の圧に飛雄馬は無上の喜びを得る。根元までを一気に押し込んだかと思うと、一徹は一寸の間も置かず、飛雄馬の尻を己の腰で叩いた。
体の奥深いところを一徹の男根が貫いて、飛雄馬はビクビクと震える。彼が腰を叩きつけるたびに飛雄馬が身に纏うぐっしょりと汗と体液とに濡れたスカートのプリーツが揺らめく。
その紺色をしたひだはうまい具合に結合部を覆ってくれ、飛雄馬の下腹部に乗っている。飛雄馬は一徹に幼い頃よりあの星を目指してひたすらに頑張れ、と言われ続けてきた。男なら胸に星を抱いて何事もやり抜けと言われた彼が、姉の女の象徴のようなスカートを身に纏って、だらしなく足を開いて与えられる快楽に何もわからなくなってしまうほどに酔っている。
なんと無様で、滑稽であるのか。しかして、この我を忘れるほどに酔いしれる行為もまたその父から野球の苦痛と共に与えられたものだ。
「は、っ………くくっ、とうちゃ……あ、あっ」
一徹の腕に爪を立て、飛雄馬は目を閉じる。腹の奥底を穿つこの痛みが妙に心地良かった。がくがくと全身を揺さぶられ、逃げようとする腰を掴まえられ、飛雄馬は幾度となく絶頂を迎える。
それは射精を伴わないものであり、それこそ女のように体の中をめちゃくちゃに擦り立てられ、訳が分からなくなるほどに飛雄馬は父の与える快感に酔った。
飛雄馬の背にした畳が彼の汗を吸って、じんわりと湿ってきた頃合いに、一徹はそこでやっと彼の中に欲を吐く。 終始開いたままになっていた飛雄馬の股関節は一徹が離れたあとも痙攣し、まともに立つこともままならないほどであった。
汗でぐっしょりと濡れ、肌に張り付く姉の制服を身に纏ったまま飛雄馬は畳の上に寝転んだまま、たった今まで父の存在していた下腹を撫でる。
全身がだるく、腰がまだ震えていた。
そうして、ふと香ってきた一徹の嗜む煙草の匂いに飛雄馬は立てた膝頭同士を摺り合わせる。伴い、スカートの裾が揺れ、湿った畳の上を音もなく滑った。