練習あと
練習あと いつもの練習終わり。
伴と飛雄馬の二人は寮に帰ってきて、ふうと一息ついた。互いに精根尽き果て、くたくたの状態である。このまま風呂にも入らず眠ってしまいたかったが、そういう訳にもいかずそれぞれベッドに腰掛けたままぼうっとなってしまっていた。
「……」
「……」
「……プッ、なんじゃ星、その顔は」
薄ぼんやりとした目で顔を見合わせた二人だったが、先に伴が吹き出すと、釣られ飛雄馬もクスッと笑みを漏らす。
「笑うな伴!おまえだって間抜けな顔が余計間抜けだぞ」
「う……それを言うな星よ」
肩を落とし、深い溜息を吐いた伴のそばに飛雄馬は歩み寄って彼の被っていた帽子を取ると、その汗ばんだ額に口付ける。
「わっ、たたたっ!星!何をするかあ」
「うふふ」
悪戯っぽく笑って、飛雄馬はぎゅうと彼の顔に自身の胸を押し付けるようにして抱き着いた。一瞬、面食らって目を丸くした伴だったがすぐに力を抜いてから腕の力強くその体を抱いてやる。
「……伴とこうしているとこう、あったかくなってくる」
「あったかく?そりゃあ、そうじゃろう。こうしてくっついていればあったかくもなるだろうて」
「ふふ、ちがう……」
「違う?」
上目遣い気味に飛雄馬を見て、伴は首を傾げた。うふふ、と飛雄馬は再度笑ってから、こう、胸の辺りがな……と伴から少し体を離して胸をさする。
「胸の、辺りが」
どこかピンと来ず、伴は首を捻りその太い眉をしかめた。
「安心する、と言うのが適当かも知れない。ふふ、とうちゃんも優しかったがおまえは無条件に優しいからな。何をしても許してくれる」
「おれだって怒ることはあるぞう」
「いや、なに、そういう意味じゃない」
しかめていた眉を吊り上げ、声を荒げた伴に飛雄馬は己の顔の前でぶんぶんと手を振ってしきりにそうじゃない、と否定の言葉を口にした。
「ぶぶっ、そんなムキにならんでも……星よ、おまえの言うとおりおれは優しいからそれくらいでは怒らんぞ」
「……知ってるさ、それくらい」
目を細め、飛雄馬は笑う。どうやら見透かされていたらしい。さすが星じゃのう、と伴は鼻の下を指の腹で撫でてから、再度彼の体を抱き寄せた。
そうすると、ベッドに座る伴の開いた足の間、そこから覗くベッドの縁に飛雄馬は片膝を乗せて少し体を縮ませてから彼の額に唇を寄せる。額から眉、そして瞼、鼻の頭と来てからおつぎは口だろうと唇を尖らせた伴を躱して、頬へとちゅっと音を立て吸い付く。
「む……」
「ふふっ、しっかりしてくれよ」
言って、飛雄馬は伴の首に抱き着くとそのまま体重を掛けそのまま前に倒れ込んだ。伴からしてみれば突然首に縋られたかと思うと間髪入れず後ろに押し倒された形になって、どーんとベッドに二人倒れ込んだ。スプリングが一度大きく跳ねてから、それから数回ゆらゆらと揺れた。
飛雄馬の軽い小柄な体は半分以上伴の体の上に乗っている。
伴は無言でベッドに両肘を付いて、ぐいと足の力も借りつつ飛雄馬の下から這い出し、僅かに上体を起こした。
すると飛雄馬も伴の体に埋めていた顔を上げ、これまた彼もベッドに掌を付いて上体を伴へと寄せると顎を上向かせ目を閉じる。えっ!?と伴は狼狽え、辺りをきょろきょろ見回したがその内観念したか、飛雄馬の唇にそっと尖らせた己の唇で触れた。
「風呂は、いいのか」
「後でいいさ……」
尋ねた伴の唇に開いた口で噛み付かんばかりに口付けてから、飛雄馬は彼の唇を舌先でなぞった。すると伴の大きな体はビクッと震えて、僅かに閉じられていた唇が上下に分かれた。並ぶ歯列を舌で撫でて、飛雄馬は伴の舌に己のそれを触れさせた。
吐息を漏らして、顔を上向けた伴の体を追うようにして飛雄馬もまた体を寄せる。
そうして離れた唇で飛雄馬は伴に口付けて、身に纏っているジャイアンツのユニフォームの前を留めているボタンに手を掛けていく。
「あっ、星」
上からふたつを外したところで伴は飛雄馬の行動に気付いたか無理やり唇を離してから、その体を下から抱きすくめる。するとちょうど伴の顔が飛雄馬の喉元付近に来て、そのまま彼の皮膚の薄い首筋へと吸いついた。
「あ、ン……んっ」
震え、甘い声を上げた飛雄馬の尻を撫で、伴は彼の腰を抱き寄せた。首筋に舌を這わせ、ユニフォームのズボンを留めているベルトを緩める。
と、ふいに飛雄馬は体勢を崩してふらふらと腕の力なく伴の胸に倒れ込んでしまう。今度は伴が情けないのう、と笑って、飛雄馬の穿くズボンの中へと手を差し入れる。伴の掌が下着の上から飛雄馬の尻を撫で回し、そのなだらかな双丘の谷間へと指を這わす。
腰を片方の手で抱き留められているために飛雄馬はぴくん、ぴくんと体を小さく震わせつつ、徐々に立ち上がってくる己と下腹部を伴の腹に押し当てる形となる。
すると、下着の上から肌を撫でていた伴の指がそろりとその布の中に忍び込んできた。直に尻をなぞる指の感覚がまともに皮膚の上を走って、ぞくぞくと飛雄馬の肌が粟立った。
「あ、あっ……」
鼻にかかった吐息混じりの声が漏れて、飛雄馬は体を乗せている伴のユニフォームをぎゅっと掴む。それから伴は抱き寄せている飛雄馬の足を広げさせ、己の体を跨ぐような位置に足を置いたかと思うと、その双丘の谷間を指先ですうっとなぞりあげたのだ。あうっ、と飛雄馬は喘いで、更に臍の下は熱を帯びる。
「っ、ふ、ううっ……うっ」
すりすりと谷間を撫であげられて飛雄馬の体は小刻みに戦慄く。もう下着の中では先走りが大量に溢れ、その布地をぐちゃぐちゃに濡らしている。すると、ふいに伴の指が飛雄馬の窄まりへと到達する。きゅっと閉じられたそこに伴は指を宛てがって指の腹でくすぐるかのようにしてゆっくりと刺激に慣れさせていく。
「は、あ、あッ……ん」
そのうちに何の抵抗もなく飛雄馬の体は伴の指を受け入れる。体が興奮しきって、粘膜も熱く火照っていた。一度ゆっくり指を奥まで飲み込ませて、それから伴は中で指を前後にそろそろと動かす。
伴の指の太さに慣れつつあった粘膜がふいに動きのぶん掻き乱され、ビクッと大きく飛雄馬は背を反らす。そうして指の腹、全体を使って興奮し、充血した柔らかな粘膜を擦られ、撫でられて飛雄馬は顔をしかめ、下唇を噛んだ。しかして、まだその責め苦は終わらない。ようやく指一本の刺激に慣れつつあった飛雄馬の体内へと二本目の指が挿入されたのだ。さすがに指二本の存在感は物凄く、飛雄馬はぐぐっ、と喉奥から振り絞るような声を上げる。
「大丈夫か」
いつもの調子で伴が尋ねてきたために、飛雄馬はそれを肯定するかのように頷いて、彼の胸へと顔を埋めた。
相手が伴だからこそ、伴であるからこそ、この痛みにも耐えられるのだ。いつも身を張り献身的に尽してくれる彼だからこそ。
飛雄馬の腹の中をある程度解したところで伴は指を抜いて、ころんと己の上に乗っていた彼の体をベッドに仰向けに転がすと、その大きな腕で飛雄馬を抱きかかえるようにしてベッドの中央まで移動させた。
「っ……」
瞳を赤く涙で潤ませて、飛雄馬は体の上にのしかかって来た伴を仰ぐ。星、と見上げられた彼は飛雄馬を呼んで、己の穿くズボンのベルトを緩めた。そうして身を屈め、飛雄馬の瞼の上へと口付けて、僅かに身を翻したために眼前に露わとなった彼の耳元へと唇を寄せた。
赤く熱を持つ飛雄馬の耳を犯してやりながら、伴は彼の辛うじて足に引っかかっていたズボンと下着とを脱がせにかかる。
ストッキングと靴下を着用しているために少し手間取ったものの、靴を脱がせ、そこからユニフォーム共々下着を抜きとってやった。飛雄馬の足元はストッキングと靴下を着用したままである。
伴は額に垂れた汗をぐいと腕で拭って、ユニフォームの中から怒張した逸物を取り出すと、飛雄馬の開かせた足の間、先程まで己が指で弄んでいた彼の窄まりへとそれを宛てがった。
「い、行くぞ、星」
「ふふ……いつでも、来るといい」
微かに口元に笑みを湛え、飛雄馬はぐっと力強くゆっくりと、しかし確実に腹の中へと突き進んでくる伴の熱さとその重量感に腰を反らす。
「はぁ、ッぐ……う、ぅう」
伴の逸物が飛雄馬の粘膜を擦って、グイグイとその身を奥へと突き進める度にその肉壁を引きずり、押し込む。
それから逃げようと身を反らす飛雄馬の足を掴んで伴は根元までを一度彼の中に飲み込ませてから、一息ついた。じっとりと飛雄馬の肌には汗が滲んで、その唇は無一文に引き結ばれている。
「星……」
「ばっ、あまり……見るんじゃないっ……」
視線に気付いたか飛雄馬は顔を手で覆って、それきり黙った。よほど恥ずかしいと見えて頬だけでなくその耳までもが赤く染まっている。
吹き出したいのを堪えて、伴はそろりと腰を動かし始める。ようやく馴染み始めた腹の中を今度は何の忠告もなく引きずられて、飛雄馬は伴の吸った跡の薄く残る首筋を彼の眼前に晒した。一度引いた腰を再び飛雄馬の中に突き入れ、速度こそ遅いが伴は彼の中を深く抉っていく。
「あ、あっ……待っ、がっつくな、っううっ!」
伴の大きな体が動くのに合わせ、ベッドもやたらと軋む。立ったままの飛雄馬の逸物は体を揺さぶられる度にそれに合わせてゆらゆらと震えた。
伴のカリ首が腹側にある器官を撫で擦って、飛雄馬はその妙な感覚に身をよじる。 すると伴は飛雄馬の膝の裏に手を入れ、ぐいと彼の足を腹の方へ押し付けるようにしてより己の身を飛雄馬へと押し付ける。そのお陰でより深く、奥に伴は到達し、飛雄馬は悲鳴を上げた。
「伴っ、待て……苦し、っ……はぅ、ぐっ」
大きな体にのしかかられ、飛雄馬は痛みに喘ぐが伴には聞こえていないようで、額から汗を滴らせつつ伴は一心不乱に腰を振り、飛雄馬の中を穿つ。
「く、くっ……」
眉間に皺を寄せ、飛雄馬は己の体の脇に置かれた伴の腕に縋って、ユニフォームの袖を握る指に力を込める。と、その内にピタリと伴は動きを止め、飛雄馬の中にその精を吐き出した。腹の中の伴が脈動し、とくとくと体液が腹の中に注がれるのを飛雄馬はその腹を上下させながら静かに感じている。
「う、ぐぐ……」
「ふ……相変わらず最中は人の話を聞かぬやつ」
皮肉るように飛雄馬が零すと、伴は面目ない、とぼやいて頭を掻いた。
そうして、ずるりと逸物を飛雄馬の中から抜きとって、部屋にあるテーブルの上からティッシュを取るとそれで拭ってから下着の中に仕舞った。飛雄馬も箱ごとそれを受け取ってから、腹の上に溢れた己の先走りと尻を拭う。
「ほ、星よ、風呂にいかんか。汗をかいたろう」
「……ああ、そうだな。もう少ししたら行くとするよ」
「ん、そ、そうか」
照れ臭そうに伴は頬を掻いて、ゴロリと寝返りをうった飛雄馬の背を眺める。
「……」
ベッドに腰掛け、伴は己に背を向けた飛雄馬の顔を覗き込むようにしつつ彼の頬へと口付けを落とす。
「……伴!」
体を起こして飛雄馬は伴を仰ぐ。
「へへへ」
いつものえびす顔になって、伴は鼻を啜る。飛雄馬もそれを受け、ふふと笑んでから伴の腕の中目掛け体を倒す。
「うおっ!危ないぞ星!おまえがケガでもしたらどうするんじゃ。わしの命なぞなんぼあっても足らんぞ」
「それを受け止めるのが伴の役目だろ、うふふ……」
「こいつめ!人を試しおって」
ぱちんと飛雄馬の頭を叩いて伴はぎゅうと彼の体を抱き締める。飛雄馬も自然と綻ぶ顔を隠すこともなく伴の背に腕を回して、すりすりと彼の胸に頬を寄せた。
また明日からもきつい練習が待っているが二人なら辛くなかった。どんな試練が待ち受けていようとも乗り越えていけると、そう二人は思っていたし、この無二の親友と一緒ならなんだってできると、そう信じていた。
刻一刻と夜は更けていく。二人は一度体を離してからどちらともなく口付けて、風呂の準備をするためにそれぞれに背を向けて荷物を漁り始めたのだった。