ぬくもり
ぬくもり 先に行っているからなと伴に言い残し、飛雄馬は一人風呂から上がって宿舎の己が充てがわれている部屋に戻った。濡れた髪を一通り拭いてからふと、伴のベッドに寝転がってみる。同じベッドで同じ布団に枕。違うのはその香りだけか。
喜び、悲しみを互いの出来事のように分かち合ってどこに行くにも一緒で、唯一離れていると言えばマウンド上か。18.44メートル。それがピッチャーとキャッチャー間の距離。
飛雄馬はごろりと仰向けの状態から己のベッドのある方向へ寝返りを打つ。
風呂に浸かり火照った体がにわかに冷えて布団をかぶれば、伴の匂いが強く鼻を突いて、何だか現にあの強い太い腕で抱かれているような気になって、飛雄馬はふふっと一人笑んだ。自分の体温のせいで布団の中が暖まって、余計にそんな気がしてくる。
「何をしとるんじゃ、人の布団なんぞにくるまって」
「ばっ、伴!!」
いつの間に戻ってきていたのかふいにそんな言葉を投げ掛けられ、飛雄馬は跳ね起きた。全く予想だにしていない伴の登場に飛雄馬は赤面し、目を泳がせる。
「……なんじゃあ?間違えたか?」
「あ、いや……まあ、そんなところか」
とぼけたところで飛雄馬の頬は真っ赤に染まってしまっている。伴もそれに気付いたか否か、黙ったままどすんとスプリングを軋ませ飛雄馬の座るベッドの端に座ると、がしがしと頭をタオルで拭った。
「……も、もう寝よう。明日も早い」
居たたまれなくなり、飛雄馬は腰を上げ、ベッドから床に足を下ろそうとするも、それより早く彼の腕を絡めとった伴が飛雄馬の体をぎゅうと抱いた。
「あ……」
たった今まで布団の中で嗅いでいた伴の匂いがほのかに香って、太い腕と熱い体に抱き締められて飛雄馬の下腹部が切なく疼く。臍の下がじわりと熱を帯び、布地を持ち上げる感触があった。
「伴!離してくれ!」
「事が終われば離してやるわい。可愛いのう、星は」
「可愛いだと!おれがか」
己の小柄な体格に劣等感を抱く飛雄馬は伴の言葉にムッとなる。しかして、伴が僅かに抱き締めていた腕を緩め、額に口付けて来たために反射的に目を閉じた。
そうすると、伴の唇が次に触れたのは飛雄馬の口元である。
「っ、ふ……」
唇を重ねたあと、伴は身を屈め飛雄馬の首筋へと顔を寄せる。ちゅっ、ちゅっと肌を吸われる刺激に飛雄馬は体をぴくんと跳ねさせ、声を漏らした。星、と呼ぶ伴の囁きが耳を犯す。その内に、伴は飛雄馬の着ているパジャマのボタンをひとつひとつ外し、その肌を蛍光灯の下に晒させた。
「あっ、待っ……」
伴の手が飛雄馬のランニングシャツの裾から肌を撫で、胸へと到達すると指の腹で乳首をそろりと押し潰す。
「っぐ……く」
ぎゅっと伴の腕、パジャマの袖を掴んで飛雄馬はその刺激に耐える。立ち上がった突起の上を伴の指は何度も往復し、くりくりとその上で弧を描く。飛雄馬の腰は震え、その臍の下はすっかり出来上がってしまっている。
「伴……っば、ん」
「星……」
囁いて、伴は飛雄馬の背に腕を回すとその体抱きかかえるようにしてベッドの上へと押し倒した。そうして間髪入れず、たった今まで指で捏ね回していた彼の乳首へと吸いついて、パジャマのズボンの中に手を入れる。下着の中にまでその指は潜り込んで、飛雄馬の勃起しきった逸物を掌で撫であげた。
「っあ、あぁ……!」
陰嚢ごとその大きな手で揉みしだきつつ、伴は飛雄馬の乳首に吸いついたまま、舌先でそれを転がした。飛雄馬の体は大きく弓なりに仰け反って、その鈴口からもとろとろと先走りを滴らせる。
伴はしばらく飛雄馬の男根を撫でていたが、すぐにその膝を立たせると彼の尻へと指を這わせ、その窄まりを慣らしていく。
「あ、っ、伴……」
飛雄馬はいつもより早く体の中に侵入してきた伴の指に体を強張らせ声を漏らす。普段なら一度、前でいかせてくれるのに、と。
「さっきからいくのを我慢しとるんじゃあ……星」
指を強く締め上げる飛雄馬に伴はそんな言葉を吐いて、眉間に皺を寄せる。
「……来てくれ、伴」
「……」
ごくり、と伴の喉仏が大きく動いたのを仰ぎつつ、飛雄馬は己の腰を浮かせ下着とパジャマを脱ぐと、自身を組み敷く彼の体の幅だけ足を開いた。
伴もまた、膝立ちになって穿いているパジャマと下着を引き下ろすと飛雄馬の足の間に身を滑らせ、彼の足を脇に抱えると、その中心に己の怒張を充てがう。
グッ、と逸物に手を添え腰を突き入れてやると伴の男根は飛雄馬の中に飲み込まれた。ゆっくりとその肉壁を擦り、己の形に作り替えつつ伴は飛雄馬の中へと突き進んでくる。
「は、っ、ぐ、ぅうっ」
痛みこそほとんどないものの、腹の中をぐいぐいと押し広げつつ奥へ奥へと邁進してくる異物感とその圧迫感に飛雄馬は到底慣れそうになかった。
伴は時間をかけ、飛雄馬の中に己の埋めると、その腰を穿ち始める。体を仰け反らせ、シーツを握る飛雄馬の手、その指をゆっくり外してやりながら己の指を絡ませる。飛雄馬もまた握られた手を強く握り返しながら開いた口から吐息を漏らし、顔を逸らす。
「星、星っ……」
懸命に名を呼びつつ腰を打ち付ける伴の逸物がその度に飛雄馬の体内を擦り、より奥を抉ってくる。
「は、っ……ン、んっ、伴……伴っ」
反り返った伴の男根は飛雄馬の腹の中、その臍側を擦り立て、いわゆる前立腺の位置を責める。骨盤が砕けてしまいそうな程に強く腰を叩きつけられ、飛雄馬は背中を大きく反らしてはしたなく声を上げた。
「あ、っ、星。出っ……」
言うが早いか、伴はぬるりと飛雄馬の中から男根を引き抜いて彼の腹の上へ欲をぶち撒いた。
「……」
「星っ……すまんのう。お前より先に出てしもうたわい」
言って、早々に逸物を拭ってズボンの中に仕舞おうとする伴を飛雄馬はベッドに横たわったまま手招きした。
「おう、すまん。おれだけさっさと終わらせてしもうて、えっ!」
ティッシュ箱を手にこちらににじり寄ってきた伴の首に抱き着いて、飛雄馬は驚き目を丸くしている彼の口へと己の唇を押し当てる。まるっきり油断していた伴は飛雄馬に縋りつかれ、ぐいと抱き寄せられたためにそのまま前のめりにベッドに手をつく羽目になった。
「なっ、星……う、うっ」
唾液を纏った柔らかな舌がゆるりと伴の口内へ滑り込んできて、彼のそれに触れた。その途端、射精を終え萎えかけつつあった伴の逸物が再び熱を持つ。
「や、やめんか星ぃ」
「……お前だけいって終わりだなんてずるいじゃないか」
「……」
喚いて口を離した伴の唇に飛雄馬は再度唇を寄せ、その上唇を僅かに咥えてちゅうと吸った。すると伴もまたほんの少し顎を上げ、飛雄馬の唇に口付ける。
己の首を抱く飛雄馬の腕を外してやりながら、伴が冷えた彼の肌に唇を押し当ててやると、飛雄馬は一際高い声を上げた。
「明日も早いと言うたのは星じゃなかったか」
「っ、……始めたの、は伴だろうっ……」
「元はと言えば星が人のベッドで寝ていたからじゃあ」
「は、っ……ふぅ、つっ」
目を細め、飛雄馬は口元に腕を遣る。もうだいぶ夜も更けた。他の選手・先輩方はもうとっくに眠っている時刻だ。やたらに声を出せば薄い壁の向こうに筒抜けである。 伴は飛雄馬の柔らかい逸物を握ってそれを掌ですりすりと揉みあげた。
「あ、っは、ぅうっ」
「こっちはいっぺん出しとるからのう」
次第に己の手の中で大きくなる飛雄馬のそれを伴は最初はゆっくりとしごいてやる。そうすると刺激を受け充血した飛雄馬の男根はびくびくと脈を打つ。
そうして裏筋を親指の腹で撫でてやると、飛雄馬の腰は揺れ、鈴口からは先走りが溢れた。
「ば、っ……伴っ!」
「出すとええ。ちゃあんと受けとめてやる」
「いっ、……ん、ああっ!」
ぶるっ、と飛雄馬は震え、その逸物の先から白濁を迸らせた。伴はそれを掌で受けとめ、ティッシュで拭うと白い腹を上下させ小さく震えている飛雄馬の足を掴み己の方へ引き寄せる。
「明日に障らんか」
「……ふ……それは、伴次第だろう」
「言ってくれるわい」
伴は苦笑し、汗ばむ飛雄馬の尻へと再び己の逸物を押し当て彼の体の中へと挿入した。すっかりその中は解れており、伴の男根に絡みつき、優しく締め上げる。
「ん、っ……っ」
一度腰を引いて、伴は強く飛雄馬の尻へと叩きつけてやった。びりびりと擦られる腹の奥が疼いて、飛雄馬は顎を上ずらせ、背を反らす。一度達している分、余裕があるのか伴の腰の動きも先程とは違っていた。
飛雄馬を悦ばせるためだけに動いていると言っても差し支えないであろう。飛雄馬が喉を晒し喘ぐ位置を何度も擦ったかと思えば、僅かに違う場所を撫であげる。
「――っ、く、あっ」
腰が揺れ、飛雄馬の口の端からは唾液が滴り、顎を濡らす。
汗の玉の浮かぶ飛雄馬の額を撫でてやって、伴は飛雄馬の腹に自身の体を押し付け、より深く己を彼の中に飲み込ませて、腰を穿つ。
「ひ、っ……あっ、あ、あっ」
ぎゅうっと固く閉じた飛雄馬の目尻から涙が溢れ、頬を滑る。伴の腕に縋りついて飛雄馬は掠れた声を上げつつ果てた。
けれども伴の責めは終わらず、達した飛雄馬の腹の中をめちゃくちゃに嬲った。
「い、いやだっ……ばん、伴っ……くるし、っ……」
「……」
悲鳴にも似た声を上げる飛雄馬の腹の中に伴は射精して、はあっ、と一息ついた。飛雄馬はまだ余韻が抜けぬか目を閉じたままその体を戦慄かせていた。
「……星」
「ん……」
飛雄馬の腹の上に残っていた己の精をティッシュで拭ってやってから伴は自身の後始末を終え、飛雄馬の横たわるベッドの隣へと寝転がった。
飛雄馬はとろんとした瞳を伴に向け、ニコリと笑むと再び目を閉じる。そうしてそのまま寝入ったか、軽い寝息さえ聞こえてきた。伴はふう、と溜息を吐いてから飛雄馬の髪を優しく撫でてやる。
その大きな手の暖かなぬくもりに飛雄馬は一瞬ハッと目を覚ましたが、優しく己を見つめる伴に気付くと再びゆっくりと眠りに落ちた。