日課
日課 しまった、寝坊した──と飛雄馬は布団から飛び起き、狭いシングル布団の隣で伴が寝ていることに気付いて、今日は日曜か、と苦笑する。
伴が遠いアメリカから呼び寄せてくれた専属コーチ・ビッグ・ビル・サンダーは練習は練習、休日は休日とメリハリをしっかりつけることを座右の銘としているらしく、それを守るように、と通訳を通し、来日早々こちらに伝えてきた。ゆえに、英語でいうところのSUNDAY、いわゆる日曜日はこうしてゆっくりと過ごすことが伴宅に居候しての日課となっていた。
とはいえ、伴のように昼まで寝ていて朝食だか昼食だかわからんような食事を摂るといっただらけた生活を送るわけにもいかず、遅くとも8時前後には起きるようにしている。
普段は5時前後に起き、町内をランニングをしてからトレーニングに励むことを考えたら、充分休養できている。飛雄馬は畳にはみ出し、大の字で大いびきをかく伴に自分がかけていた掛け布団を乗せてやると、寝間着代わりの寝乱れた浴衣を直し、そっと部屋を出た。サンダー氏はどこかに出かけているのか例の片言の日本語は聞こえてこない。
代わりに、屋敷のお手伝いさんが辺りを駆け回る足音が微かに耳に届く。とりあえず用を足して、洗面を済ませてからお手伝いさん──おばさんに声をかけよう、とそちらの方へと板張りの廊下を進む。
それにしても良い天気だ。家で過ごすのがもったいないくらいの──飛雄馬は、庭に面した縁側の廊下を歩きながら何やら庭土を啄む雀の様子を眺めつつ頬を緩ませた。鹿威しの軽快な音色が聞く者の心を落ち着かせてくれる。庭木たちは綺麗に手入れされており、ここを眺めているだけで一日潰せそうでもある。
自分が生まれ育った長屋とは大違いだ、と飛雄馬は陽の光を浴び、朝露がきらきらと煌めく緑を見つめつつ、己の幼少期を脳裏に思い浮かべた。
確かに辛く、暗い時期ではあったが、あの時代があってこその今であり、ねえちゃんにはもちろんのこと、親父にも感謝している。
「…………」
「あら、星さん。おはようございます、早いですね」
「あ、おはようございます」
ふいに声をかけられ、飛雄馬はドキッ!と体を跳ねさせてから声のした方向へと体を向けた。
すると、満面の笑みを浮かべたおばさんと目が合って、飛雄馬もつられ、微笑む。
「朝食、できていますよ。お召し上がりになりますか?」
「顔を洗ってから伺うつもりでいました。それにしても見事な庭ですね」
「ああ、先日庭師を入れたばかりで……四季折々の表情を見せてくれてこのババも気に入っております」
「伴の親父さんの、いや、大造さんのご趣味ですか?」
「一流の庭師に造らせたそうで、自慢のお庭とお聞きしましたよ」
そうですか、と飛雄馬は返事をしてからしばらく、庭を眺めていたが、失礼しますと頭を下げ、洗面所までの道のりを歩み出す。
親父さんのことを年を取ってだいぶ丸くはなったと伴は言っていたか。近々、挨拶に行かねばなるまい。
伴は行かなくていいと言っていたが、屋敷に居候させてもらって、黙っているわけにもいくまい。
話では今は別宅で悠々自適に過ごしていると聞いたが、まさか自分が居候しているからではないだろうか、という不安も頭をよぎる。
「…………」
飛雄馬は辿り着いた先、洗面所で顔を洗い、歯を磨いてから来た道を引き返す。伸ばしたままになっている髪が鬱陶しい。こちらも早々に短くせねば。
と、あれこれ考えつつ歩いていると、洗面所からリビングまであっという間で、飛雄馬は中で待っていた彼女に再び、おはようございますと頭を下げてから、促されるままにテーブルに着いた。
「宙太坊っちゃんは昨日も遅かったんでしょう。会社の付き合いも大事だと思いますけれど、身体を大事になさってほしいものですよ」
「よく言い聞かせておきます」
茶碗に飯を盛り、椀に味噌汁を注ぎつつ何やら小言を口にする彼女に愛想笑いを返してから飛雄馬はいただきます、と受け取った椀の中身を口に含んだ。
出汁の効いた素朴な味噌汁が喉を潤し、思わず表情筋が緩む。おいしい、と本音が思わずこぼれて、飛雄馬はハッ、と口元を押さえた。
「いえいえ、そんな嬉しいですよ。美味しいと言っていただけるのは作り甲斐があります」
「こんなに美味しい食事を作ってくださるおばさんがいたら伴のお嫁さんになる人は大変でしょうね」
はは、と飛雄馬は乾いた笑いをひとつ、溢してから茶碗を手に白米を頬張った。咀嚼のたびに米の甘みが口に広がって、飲み込むのが惜しいくらいである。
「お見合いは今までも何度もなさっているご様子ですが、なかなか難しいようで……」
「…………」
伴が妻帯者であったら、それこそ巨人復帰は見果てぬ夢であったろうな、と飛雄馬は焼き魚の身を箸で弄びながら親友の顔を思い浮かべる。
独身であればこそ、金をある程度自由に遣うこともでき、こうして屋敷に住まわせてくれもしたが、伴のことだ。きっと奥さんに頭が上がらんに違いないことを考えると、彼が独身のままで良かった、と思ってしまう自分がいる。
彼がどういうつもりで今現在も独り身のままかはわからんが、いずれは妻を娶り、父親にもなるのであろうことを考えると、寂しくもある。
「星さんは将来、結婚したいとか考えたことありますか?」
啜ったばかりの味噌汁を吹きそうになって、飛雄馬は数回、咳き込んでから、そうですね、いい人がいれば……と当たり障りない返事をした。
今はそんなことを考えている余裕などまったくないのだが、おばさんにそこまで伝える必要はないだろうと考えてのこと。きっと好奇心ではなく、心の底から伴とおれのことを思ってそう言ってくれているのだろうから。
「ふふ、いいお父さんにおなりになるんでしょうね、星さんは」
「いい父、ですか……どうでしょう」
自分が親になるなど想像したこともない。
いい父とはなんだろう。子供に自分の夢を押し付けない親か?子供の自主性を摘み取ろうとしない親か?
考えても答えは出ない。
「おかわり、いりますか?」
「あ、はい」
いつの間に空になっていたのか、白米の補充を訊かれ、飛雄馬は茶碗をおばさんへと差し出す。
伴は子煩悩で、優しい父親になるに違いない。
そんな伴をたしなめ、いけないことはいけないのだとしっかり子供に教えられる奥さんを娶るのが一番だろう。
ありがとうございます、と返された茶碗を受け取った刹那、何やら屋敷が揺れて、ふたりはハッ!と顔を見合わせる。すると、続いて、星ぃ〜!と聞き慣れた叫び声が同じく屋敷を震わせて、ああ、伴が起きたな、と飛雄馬は溜息を吐いた。
まったく、いい加減にしてほしい。
おれが黙って屋敷を出ていくとでも思っているのだろうか。
「星!探したぞい。おるなら返事をせい!」
ぜいぜいと全身で息をしながら、乱れた浴衣を直そうともせず寝癖をつけたままの伴がリビングへと現れて、飛雄馬は、朝から相変わらず元気だな、と素っ気なく言葉を返した。
「げっ、元気じゃあないわい。朝から走り回って疲れたぞい。起きたら星がおらんからわしゃ驚いて飛び起きたわい」
「毎週毎週懲りないな、きみも」
「もう星と離れるなぞ二度とごめんだからな」
「坊っちゃんは星さんが大好きですものねえ」
「…………」
「…………」
しん、とふたりの間に沈黙が流れ、伴はおばさんから受け取った味噌汁の椀に口を付けた。飛雄馬は小皿に盛られた漬物を頬張り、それを奥歯で噛み締めながら伴の横顔を見遣る。
おばさんはもしや伴とおれの関係を知っているのではあるまいな。なぜ伴がおれの部屋を夜な夜な訪ねてきては隣で眠っているのか。
今朝だって日が変わる頃、酔ってへべれけ状態になった伴が布団にもぐり込んできて、眠ったのは夜中の3時過ぎである。こちらとしてはいい迷惑であるが、屋敷に厄介になっている身でそんなこと言い出せるわけもなく……いや、正直、本音を言えば……。
「そうじゃい。わしが結婚せんのも星がだーいすきだからじゃい」
「…………!」
漬物の最後の一口を口に含んだ飛雄馬だったが、伴のまさかの発言にろくに咀嚼もせぬまま飲み込む羽目になった。
「あらいやだ。星さん、坊っちゃんあんなことおっしゃってますよう」
幸い、おばさんは伴の言葉を冗談と思ってくれたようで、からからと声を上げ、笑い飛ばしてくれた。
飛雄馬は冷たくなってしまった湯呑みの中身を一気に飲み干し、ごちそうさまでした、と言うなりリビングを飛び出す。後ろから、星、と伴が呼ぶ声がしたが、振り向くこともせず廊下を駆けた。
一息に自室に充てがわれている部屋に飛び込み、後ろ手で戸を閉めてから大きな溜息を吐く。
伴のやつ、なんてことを言うんだ。おばさんか笑い飛ばしてくれたからよかったようなものの、あんなことを恥ずかしげもなく口走るなんてどうかしている。
しばらく、外を歩いてこようか、そうすれば伴に抱いた怒りも、いたたまれなさも気恥ずかしさも少しは薄れてくれるに違いない。
飛雄馬は息を整えてから、くるりと体の向きを変え、廊下と部屋とを隔てる襖を前にすると、大きく息を吐いた。と、次の瞬間、その襖が勢いよく開かれて、顔を出した伴と鉢合わせる格好となった。
「あ……」
気まずそうな表情を浮かべ、こちらを見つめる伴を睨んだまま、飛雄馬は黙っている。
「…………」
「う、その、星、お、怒ったか?」
「怒ってなどいないが、何の用だ。食事は済んだのか」
「怒っとるじゃないかあ……」
「……そりゃ、怒るさ。おばさんを前にあんなことを言って……とりあえず中に入れよ。おばさんに聞こえるぞ」
「……おう」
中に招き入れ、飛雄馬が部屋の中ほどに腰を下ろすと、伴もまた、少し離れたところにどっかと座り込んだ。
「さっきの発言だが……」
「う、嘘は言うとらんからな。事実じゃからそのことについて謝るつもりはないが、おばさんの前で口走ったのは軽率だったわい。すまん」
「…………」
ぺこり、とその場で頭を下げ、畳に額を擦り付ける伴を前に、飛雄馬は吹き出し、まあ、今回は許してやろう、と彼に顔を上げるよう声をかける。
「う……うむ。恩に着るわい」
「ふふ、大袈裟だな」
微笑んでから、飛雄馬はこちらを真っ直ぐに見つめてくる伴からそっと視線を逸らす。
先程の発言を受けて平然としてられようはずもなく、できれば早急に部屋を出ていってほしいくらいだ。
戸を開けたまま話し込むくらいならと招き入れたが、どうにもやりにくい。
「なんで目を逸らす?」
「…………」
「大好きじゃと言われたのが恥ずかしいか」
「そ、そうじゃない……」
「じゃあこっちを見るんじゃい、星」
「…………」
ちらりと視線を伴に向けかけた飛雄馬だが、次の瞬間、彼の大きな腕と広い胸に抱き留められ、うっ!と思わず呻いた。
「こうすれば恥ずかしくないわい。そうじゃろう」
「ばか……」
口でこそそう言ったが、飛雄馬は伴の胸に顔を埋めたまま口元に笑みを浮かべる。大好き、か。そっくりそのままこの言葉、きみに返すぜ、伴。
自分よりほんの少し高めの体温が心地よく、耳をくすぐる伴の鼓動は緊張しているのかいつもより多いように感じる。
「星……」
そっと体を離すなり、目を閉じ唇を尖らせてきた伴に飛雄馬は調子に乗るな、と突っぱねたのちに、自分から唇を押し当てた。
すると、そのまま舌を入れようとしてきた伴を突き飛ばし、見事に畳の上に転がった彼に対し、日が落ちたらな、とそう、返して、着ていた浴衣の帯を解き、足元にそれを脱ぎ捨てる。
「わわっ、星、言うとることとやっとることが違うわい」
顔を両手で覆いつつも、指の隙間からこちらを見上げる伴に、早く着替えてこい。久しぶりに出かけようじゃないか、と声をかけ、慌てて部屋を出た彼の姿を見つめながら、やれやれ、と飛雄馬は苦笑したのだった。ふたりの休日、日曜はまだ始まったばかりだ。


◆◇◆◇

夕方、歩くのもやっとというテイの伴と普段と変わらぬ飛雄馬が誰もいない屋敷へと帰宅し、玄関先でそれぞれ靴を脱ぐ。
屋敷の中にはサンダー氏も帰っていないのかふたり以外に人の気配はない。
おばさんには夕食はいらないからと伝えてあり、ふたりも馴染みのラーメン屋で食事を済ませている。
あとは汗を流し、眠るだけだが、久しぶりに長時間外を歩いたという伴は全身が痛むようで歩くのもやっとというような状態だった。
ひとまず風呂を沸かし、先に入るように進めたが、自分は部屋で休んでからにするわいの言葉に、飛雄馬は言われるがままに汗を流し、湯船にゆっくりと浸かってから浴室を出る。
持ち寄った下着と糊の利いた新しい浴衣を身に着け、部屋に戻ると、伴は布団も敷かず、帰ってきたままの格好でいびきをかいて眠っており、飛雄馬はほっと胸を撫で下ろした。
そうして、押し入れから布団一式を取り出し、伴の傍らにそれらを敷くと、灯りを消してから布団の中に身を滑らせる。
朝からつい先程まで、タクシーや公共交通機関を使うこともなく行方をくらませてからの間に変わってしまった東京の街並みを、飛雄馬は伴と共に歩いてきたのだ。
5年もあれば世の中の情勢も、風景も変化するには充分で、伴の話を聞きながら目まぐるしく変わっていく都会の様子に目を細めたものだった。
それにしても、運動不足だといっていた伴を付き合わせたのはまずかっただろうか。明日の仕事で使い物にならず、親父さんに怒られはしないだろうか。
ああ、それにしても鹿威しの音色が眠気を誘う…………。
気付けば、眠ってしまっていたようでもあるが、飛雄馬は何やらくすぐったいような、むず痒い感覚を覚え、目を覚ますと辺りを見回す。
すると、布団の上で浴衣の帯を解かれ、ほとんど裸同然の己の姿がそこにはあり、ふと顔を上げれば、伴の顔が目の前にあって飛雄馬は、自分の置かれている状況を瞬時に把握した。
つまり、先に目を覚ました伴が、自分にちょっかいを出しているのだ。けれど、その約束では確かにあったか寝込みを襲うのはどうかと思うが。
先程感じたくすぐったさは、伴が臍の下あたりを弄っていたかららしかった。
「星もだいぶ疲れとったようじゃのう。何をしても起きんから逆に心配になったぞい」
「せめて起きるまで待とうとは、っ、思わんのか」
「朝まで起きんかもしれんしのう」
伴はそう言うと、飛雄馬の足を大きく広げ、その中心に腰を当てがうが早いか、中へ男根を挿入させた。
「いきなり、入れるやつが、っう……」
「なに、いっぱい舐めちょるから大丈夫じゃい」
「…………」
よくそんなことを平然と言えるものだ、と飛雄馬は体の中をゆっくりと奥まで突き進んでくる伴の分身の圧を感じつつ、眉間に皺を寄せた。
中を擦り、刺激を与えられるせいで、僅かに飛雄馬の男根も反応を見せ、腹の上に体液を滴らせている。
あと少し、あと少しで伴が全部中に入ってくる。
飛雄馬は布団に体を預けたまま、目を閉じ、腹の中に意識を集中させた。
しかし、伴はすべてを中に埋めることはせず、押していた腰を引き、飛雄馬の肉壁を擦り立てた。
「っ、!」
予想とは違う伴の動きに、飛雄馬は全身に電気が走ったような錯覚を覚え、触れてもらえなかった奥が疼くのを感じる。
かと思えば、抜いたそれを、ゆっくりと中に進めてきて、飛雄馬はもどかしさに奥歯を噛んだ。
ずいぶんと、余裕があるようだが、一体どうしたというのか。いつもならば、こっちの都合などお構いなしに腰を振って果てるのに。そんなやり方に慣れてしまっているおれには、この状態は辛くてたまらない。
「ふ、ぅっ…………っ、っ!」
再び、腹の中を擦って、抜け出ていく伴の腰の動きにつられて、飛雄馬の腰が揺れる。
いつもの威勢はどうした、どうしてこんなことを……。飛雄馬は口元を腕で押さえ、声が漏れそうになるのを懸命に堪えながら無意識のままにこれ以上伴が離れぬよう、彼の腰へと足を回す。
「ぬくなっ、伴……じらさないでくれ……ん、ん」
「さっきの返事を聞いとらんぞ星ぃ」
「へんじって、なぁ、っ……う、」
ぎりぎりまで腰を進めて、伴は飛雄馬の顔を覗き込むと、ふいにそんな質問を投げかける。
「わしは星に大好きじゃと言ったぞい。星はどうなんじゃあ」
「ばっ、ばか……そんな、っ……」 「そんなとはひどいわい。わしは星のこと大好きなのに」
「ひ、っ……う、ぅ……すっ、すき。だいすきだからっ、その……っ、うぁ……」
腰を両手で掴み、ゆっくりと更に奥へと突き進んでくる伴の熱さに、飛雄馬は歓喜の声を上げ、彼の腰に回した足に力を込める。
緩んだ手を跳ね除けられて、無防備となった唇に口付けられて、飛雄馬の目尻から涙が伝い落ちた。
そこから先、飛雄馬の記憶は途切れ、気付けば朝を迎えており、ハッと体を起こしたときには普段起きる時間の数分前であった。
よかった、寝過ごさなくて……と飛雄馬は隣で気持ちよさそうに眠る伴に一言、ばかと呟いてから体を起こすと、普段着に着替え、部屋の外に出る。
するとちょうど、ビッグ・サンダーがこちらに歩み寄ってきていて、GOOD MORNING!とウインクされ、おはようございます、とか掠れた声で返事をした。
「ヨク眠レマシタカ、ヒューマ・ホシ」
「お陰様で、サンダーさんはゆっくり東京の街を観光できましたか」
ふたり並んで廊下を歩き、玄関先で靴を履いて外へと出る。陽はすでに昇っており、今日も暑くなりそうだ、と飛雄馬は空を見上げ、そんなことを思う。
「ミスター伴ニハ優シクシテアゲテクダサイ。彼、トテモイイ人。ナイスガイデス」
「…………」
フフフ、と意味ありげに微笑んだサンダーに飛雄馬は何も言えず、先に走り出した彼の後を追うように自分もまた駆け出す。
まさか、気付いている?いや、そんなはず……飛雄馬は後ろを振り返りもせず、一定の距離を保ちながら走るサンダーの背中を見つめながら、次第に眩しく、強くなる太陽光を避けるように、サングラスを着用すると、日課のランニングをこなすため、足早に早朝の街を駆けた、そんなある週の月曜日。