泥酔
泥酔 ただいま、と戸を開けるとツンと酒の匂いが鼻について飛雄馬はしまった、とそっと後退りしたが、飛雄馬!と鋭い声で呼ばれ、家の中に入ると戸を後ろ手に閉めた。
とうちゃんが、酒を飲んでいるときはタチが悪い。ゆえに、ねえちゃんもどこかに行ってしまっている。
大方、買い物にでも行ってくる、などと体のいい嘘をつき、この場を離れたのだろう。ヒック、とちゃぶ台の前に座り、一升瓶を傾ける父の、一徹の機嫌を損ねないように飛雄馬は玄関先で靴を脱ぐと、学生帽を取り、とうちゃん、と呼んだ。
明日から学力テストがあるために、今日は中学の授業は午前中で終わりであった。
帰り道、長屋のそこかしこから昼食の準備をしているのか、良い匂いが漂ってきている。飛雄馬は一徹の隣に腰を下ろし、今日のお昼、なんだろうね、となんの気なしにそう言った。
その刹那、酒に酔って顔を真っ赤にした一徹が振り返り、日に焼けた畳に手をつくと飛雄馬との距離を詰めた。
飛雄馬、と一徹は名を呼びつつ、飛雄馬の唇に口付ける。
不快なアルコールの匂いに呻いて、顔を逸らした飛雄馬だったが、顎先に手を遣られ無理やり顔を正面に向けさせられたかと思うと、その酒臭い唇が呼吸を奪った。
普段よりも熱い舌が口内をはいずり回って、舌先が歯列をなぞる。上唇を音を立て啄まれ、飛雄馬はびくっと肩を震わせた。 既に瞳は涙に濡れ、開いた口から漏れる吐息は熱を孕む。
薄い隙間風の差し込む立て付けの良いとはとても言えない玄関の戸の向こうでは、近所の子どもたちが元気に走り回っているし、長屋の住人たちが行き来する声も聞こえてくるというのに、この湿った畳の上で、親子ふたり、人様にはけして言えない秘密を共有している。
ちゅっ、と濡れた唇を離して、一徹は飛雄馬の背に腕を回すと、その体を支えつつ彼の首筋へと唇を寄せる。
それから逃れようと身をよじり、距離を取ろうとする飛雄馬を畳の上に組み敷いてから、一徹は再び彼の首筋へ顔を埋めつつ、シャツのボタンを一つひとつ外していく。
そうして、中に着込むランニングの裾を制服の黒いスラックスの中から取り出して、一徹は飛雄馬の腹を撫でるようにして一気に胸の辺りまでそれをたくし上げた。
日々の練習のせいで、顔や野球のユニフォームのアンダーシャツから覗く腕は黒く焼けているが、この服を着込む胸や腹、足は白いままだ。
めくられたランニングの裾から顔を出した飛雄馬の乳首は既にふっくらと膨らみかかっており、一徹は右の突起を顔を近付け舌の腹で舐め上げてから口に含む。
そうして、もう片方の乳首は己の右手親指と人差し指で抓みあげた。
強く乳輪ごとそれを吸い上げ、一徹は淡く突起に歯を立てる。すると飛雄馬は畳に頭をこすりつけるようにして身を仰け反らせ、声が漏れぬよう口元に手を遣った。
抓んだ左胸の突起を一徹は指の腹同士で擦り上げる。飛雄馬の腰が浮き、ぐぐっと全身に力が篭もる。
飛雄馬が穿くスラックスの前ははっきりと張り詰めており、一徹は空いた手でそれを撫でた。
「っ、………!!」
スリスリと腹に押し付けるように、下着と触れ合わせ、摩擦し合うように一徹は飛雄馬の男根を撫でさする。
甘噛みした乳首を歯軋りの要領で嬲ってやれば、撫でるスラックスがじわりと湿り気を帯びた。
一徹はスラックスを留めるベルトを緩め、ボタンを外してからファスナーを下ろす。
そうして、下着のゴムの部分をめくれば中から天を衝く逸物が顔を出し、飛雄馬は今にも泣きそうな顔をして一徹を仰いだ。
「飛雄馬、わしの上に来なさい。足腰を鍛える特訓だ」
言うなり、一徹は飛雄馬の足元に座り込んで、そのまま先程まで尻に敷いていた薄い座布団を2つ折りにしてから頭の下に追いやって、ゴロンと横になる。
「……………」
「下を脱いでからじゃ」
ふらふらと体を起こし、立ち上がる飛雄馬を叱咤し、一徹は着ている浴衣の前をはだけると、下穿きの中から男根を取り出す。
飛雄馬はストン、と畳にスラックスを落としてから、下着をも畳の上に脱ぎ去ると、一徹の体を跨ぐようにして立ち、その場に膝立ちになった。
「こわいよ………とうちゃん」
「自分で慣らしてみい」
言うと、一徹はちゃぶ台の足元に転がっていた軟膏を飛雄馬に投げて寄越す。
飛雄馬は蓋を開け、指先にたっぷりとそれを出すと、背中側に腕を回し己の尻へと塗り付ける。
指と肌の摩擦と熱で軟膏はふやけ、柔らかくなっていく。窄まりの周りを飛雄馬は刺激に慣らすように何度か撫でていたが、遂に指を一本飲み込ませた。
「あ、ぅ………」
飛雄馬の逸物から垂れた先走りが一徹の腹へと落ちる。指をゆっくり奥へと進めて行く飛雄馬だが、刺激に耐えきれず、一徹の胸の上へとへたり込む。
「と……ちゃ、ごめんなさ……っ」
「……………」
と、尻に鋭い痛みが走って、飛雄馬は顔を上げる。腰を突き出すようにして父に胸に体を預ける飛雄馬の肉付きのいい尻を、一徹が平手で張ったのだ。
「あっ、あ、ああっ!」
声を上げつつ、飛雄馬は腰をくねらせる。
白い尻たぶが真っ赤になるほど叩かれても、その男根は萎えることなく一徹の腹を先走りでぐちゃぐちゃに濡らす。
「叩かれて感じたか」
「いや………ちが、っ!あ、ん、ンっ!」
じんじんと熱を放ち、鈍痛を脳に伝える飛雄馬の尻の中心に一徹は中指を差し入れる。それは何の抵抗もなく、柔らかな肉の中へと飲み込まれていく。
「あ、っ!あ………あ〜っ」
目を見開き、開いた口から唾液を顎まで滴らせつつ飛雄馬は喘ぎ、父の指を締め付ける。
「飛雄馬、欲しかろう……入れてみい」
張り手が止み、腰を下げた飛雄馬の後孔へと一徹は己の逸物を擦り付ける。
ヒクヒクと飛雄馬の腰が揺れ、後孔も物欲しそうに弛緩と緊張を繰り返した。
「ひっ……ひれて、いれてください……」
全身を戦慄かせ、震えた声で飛雄馬は哀願する。
「入れてだと?甘ったれるな飛雄馬」
「っ、こし……ぬけて……」
「まだまだ走り込みが足らんようじゃのう」
もっともらしいことを口にして、一徹は体を起こすと、飛雄馬の体をそのまま畳の上へと押し倒した。開いた足の間から飛雄馬は一徹を仰いで、膝をふらふらと左右に震わせる。
一徹は握った逸物を飛雄馬の後孔へ充てがうと、一気に根元までを飲み込ませた。
「っ────!!!」
興奮しきり真っ赤に充血し、受け入れ体勢の整っていたそこへ父の形に慣らす間もなく、一息に男根を突きこまれ、飛雄馬の視界は真っ白になった。
散々に焦らされ、弄ばれたそこに突然に挿入されたのは刺激があまりに強すぎたのである。ぞくぞくっと背筋を絶頂の信号が駆け抜けて、脳を狂わせる。
一徹を何度も何度も小刻みに締め付け、飛雄馬は体を震わせ、気を遣った。
それだけでも十分だと言うのに、一徹は腰を振る。
「は、っ………ひ、ぅっ……とうちゃ……」
一徹の羽織る浴衣の袖を掴み、飛雄馬は喉を枯らし喘ぐ。もう声を我慢するなどと言った理性は残っていない。
すべてを父に支配され、狂ったように喘ぐことしか今の飛雄馬には出来ない。湿った畳は飛雄馬の汗で更に湿り気を帯びる。
「うごっ、かなひで………動っ、いたら……あっ、あっ!」
見上げる天井が歪んで、ぼやけて、飛雄馬は父の腕へと爪を立てた。涙が幾重も頬を、こめかみを滑る。
「また、ぁっ………いや、もっ、おねが………いッ──!」
背中を丸め、飛雄馬は体内から広がる甘い痺れに体を痙攣させる。もう何度気を遣っただろう。飛雄馬の腰の感覚などもうないに等しい。それでも、一徹の与える快楽だけは飛雄馬を覚醒させた。
「飛雄馬、そろそろ出すぞ」
「や、っ………なかはやら……中はだめ」
首を振り、体内での射精を拒んだ飛雄馬だったが、それが聞き入れられることはなく、一徹は彼の中で欲を吐く。
「は…………っ、は……」
息も絶え絶えに、飛雄馬は腹を上下させ虚ろな目で天井を見上げる。一徹は飛雄馬から男根を抜くと、ティッシュでそれを拭い下穿きの中に仕舞った。
「飛雄馬よ、足腰がまだ弱いようじゃのう。めしを食うたら町内をうさぎ跳びで回れい」
「っ………」
寝返りを打ち、飛雄馬は小さく縮こまる。
汗に濡れた背中が冷たく、腰は未だ痙攣している。
すると背後から何やら水の音が聞こえて、飛雄馬がハッと顔を上げると、どんぶりに一升瓶から酒を注いだ一徹がそれを口に運ぶのが目に入った。
一徹はどんぶりをちゃぶ台の上に置くと、再び畳の上に寝転がったままの飛雄馬のそばににじり寄り、彼の唇に口付ける。
度数は弱いとは言え、ストレートの焼酎が飛雄馬の口内へと口付けた一徹の唇から注がれた。
「……あっ………」
ぐわん、と飛雄馬の視界が歪んで、目が回る。アルコールが入り、赤く染まった飛雄馬の喉元へと唇を寄せながらまた、一徹は飛雄馬の畳の上に投げ出されたままの片足、その膝を立たせ、萎えた逸物を撫でた。
飛雄馬はこの鼻をつく匂いが自分のものなのか、はたまたとうちゃんのものなのか、部屋に染み付いてしまった匂いなのか、そんなことをぼんやり考えながら、口内に滑り込んできた一徹の舌の愛撫にゆっくりと目を閉じた。