コーチ
コーチ ヒューマ・ホシニ教エタイコトアリマス。
ミスター・伴ガ眠ッタラワタシノ部屋来テクダサイ。
飛雄馬がビル・サンダー氏からコッソリ耳打ちされたのが伴が風呂に入り、おばさんが夕飯の後片付けをしている時分だった。
眠ったあと、というのも妙な話だなと飛雄馬はサンダー氏の言葉に違和感を覚えたものの、きっと伴を何やら驚かせてやる算段なのだろう、とそれきり深く考えることはしなかった。
そうして風呂で汗を流すと部屋に帰り、就寝の挨拶をしに来た伴に笑顔でおやすみを返すと明かりを消し、布団に潜り込んだ。
サンダーさんはこんな夜遅くに何をするつもりなんだろうか。
日中の練習で疲労困憊となり、体はぐったりと重く怠いのに対し、頭は考えれば考えるほど冴えてくる。
飛雄馬は伴の部屋から高いびきが聞こえ始めたのを見計らい、布団を抜け出すとなるべく音を立てぬようにして廊下を行くとサンダーの部屋の襖をそっと開けた。
「OH!ヒューマ、オ待チシテオリマシタ」
「教えたいこととは何でしょう。サンダーさん」
「マア、マズハ中ニ入ッテクダサイ。話ハソレカラデス」
「…………」
飛雄馬は襖を静かに閉めると、橙色の豆電球の薄ぼんやりとした明かりのみが灯る部屋の中に足を踏み入れる。
「明かりはつけないんですか」
「ノープロブレム。コノママデ大丈夫デース」
明かりは消した状態で一体何をするつもりなのかサンダーさんは、と飛雄馬がその場に呆けたまま立ちすくんでいるとサンダーはカモン!と陽気にいつもの調子で場を和ませるためかウインクを寄越してきた。
この人の厳しさ、そして明るさには救われてばかりだなと飛雄馬は微笑を浮かべつつ彼が座っている布団の上に失礼しますと言うなり乗り上げ、その場に正座する。
「サンダーさん。それでこんな夜遅くになに、を」
サンダーの真意を確かめるべく、その意図を尋ねようと口を開いた飛雄馬の顎先に彼はついと人差し指をかけ、そのまま顔を上向かせた。
かと思うと、サンダーは己を仰ぐようにして顔を上げている飛雄馬の唇に自分のそれを重ね、動揺し、体勢を崩した彼の体を勢いのままに布団の上へと組み敷くに至る。
「ヒューマ……」
「さっ、サンダーさん!一体、なにをっ、あなたは、っ……ん、んっ」
唇の隙間に舌をねじ込まれ、飛雄馬は観念し口を開く。ねっとりとした舌が口内を這いずり、歯列のひとつひとつを丹念になぞっていく。
だめだ。逃げなければ、流されてはだめだ。
口付けを受け、ぼうっとしてくる頭の中で、そう考える傍ら、おれが彼を拒めば伴の苦労が水の泡になってしまう、とそんな思いが交錯し、飛雄馬は耳まで真っ赤に火照らせながら高い声を漏らす。
サンダーの熱い舌が首筋を這って、わざわざ寝間着の浴衣から着替えた紺色のシャツの裾から滑り込んだ大きな手が飛雄馬の腹を撫でた。
「あ、っ…………!」
指が触れた肌の表面がじわりと粟立ち、飛雄馬は身をよじると口元に手を遣り、唇を引き結ぶ。
「ヒューマ・ホシ。野球ノコーチ、コミュニケーショントテモ大事ネ。コレモトレーニングノヒトツネ」
「…………」
ニコニコと屈託のない笑顔を見せ、そんな台詞を口にしたサンダーを見上げ、彼のいるアメリカでは果たしてこれが本当に交流を深める行為なのだろうかと飛雄馬は疑問に思うが、怒らせ、帰国すると騒がれるよりは己が我慢をすればいい、と、そう思い込むことに決めた。
そのうちに、サンダーの指は飛雄馬の腹の上を滑り、胸の突起へと到達する。
サンダーはそれを大きな指同士で抓み上げると、突起を押しつぶすようにしてこすり上げた。
「う、うっ…………っ、ん」
ぷくりとそこが熱を帯び、膨らんだのが飛雄馬にもわかった。
適度な力を加え、サンダーはそこを潰しつつ、たくし上げたシャツの中、もう一方の胸に顔を寄せるや否や突起に吸い付く。
「は、ぁ、あっ!」
ちゅうっと力強く吸い上げた突起の頂きを舌先でくすぐり、サンダーは片方の突起をいじっていた手で飛雄馬の穿くスラックスのベルトを外すとファスナーを下ろした。
そうしてはだけた前から容易く男根を取り出し、サンダーはゆるゆるとそれをしごいていく。
飛雄馬の体には胸の突起と男根から与えられる強い刺激がビリビリと走って、正常な判断ができなくなってしまっている。
「ヒューマ・ホシノココ、トテモカワイイ。ウフフ」
サンダーの大きな手は少し動かすだけで飛雄馬の男根の先から根元までを一息に包み込み、彼を絶頂へと誘う。
先走りに濡れた男根をしごく音と、飛雄馬が声を殺しながらも時折漏らす吐息が部屋の中に響き渡る。
「っ、ふ……う、」
達しそうになると動きを緩められ、飛雄馬は赤く火照った顔をサンダーへと向ける。
「ヒューマノソノ顔ワタシ好キデス」
男根の鈴口をぬるぬると指の腹で撫で、サンダーは飛雄馬の口を覆う腕を掴み、そこから跳ね除けると深い口付けを与えた。
「ん……む、っ、」
舌に口内を蹂躙され、それの侵入を許すと同時に流し込まれた唾液を飲み下して、飛雄馬はサンダーの手の中にて吐精する。
飛雄馬はようやく与えられた射精の余韻に体を戦慄かせながらも声を押し殺すように奥歯を噛んだ。
「マダ余裕ガアリマスネ、ヒューマ」
「う、うっ……」
パチンとサンダーはウインクを浮かべると、飛雄馬に再び唇を押し付ける。
散々に焦らされ、ようやく射精の機会を与えられた下腹部は最大限に快感を引き出された結果なのか、ふわふわとまるで己のものではないような感覚が飛雄馬にはしている。
舌に上顎をくすぐられて、飛雄馬は体を大きく震わせた。
そうしてサンダーは飛雄馬の最後の砦とも言える、今や下半身に纏われたばかりとなっているスラックスと下着とを彼の腰から引き剥がす。
「う、ぁっ!サンダーさっ……!」
ビクッ!と飛雄馬は驚きのあまりサンダーから顔を逸らし、己の臍下に視線を遣る。
「大丈夫。ワタシニ任セテ」
サンダーはそう言うと、飛雄馬の足を左右に大きく開いた。
「っ……!!」
飛雄馬は顔を逸らし、眉間に皺を寄せると唇を噛む。いくら薄暗い部屋の中とは言え、この格好はあまりに屈辱的だ。
サンダーはピュウ!と口笛をひとつ吹くと、咥え、唾液をたっぷりと纏わせた二本の指を、飛雄馬の広げた足の中心にあてがった。
唾液に濡れた指を難なく受け入れたばかりか、飛雄馬はゆっくりと中を掻くその動きに思わず喘いだ。
「ヒューマ、大丈夫。声出シテ。ミスター伴、グッスリ眠ッテマス」
飛雄馬の粘膜をゆっくりと擦り上げ、到達した先でサンダーは指の関節を緩やかに曲げた。
「───!!」
ゾクッ!とそこから甘い痺れが全身に走って、飛雄馬は思わず顔を上げ、サンダーを見上げる。
「ココデスカ?ヒューマノ好キナ所ハ」
「あ、っ……う、ぅ……」
指の先でゆるゆるとそこを撫でられ、飛雄馬は身をよじり、その責めから逃れようとするも、更にサンダーの指は奥を嬲ってきた。
サンダーさんが、指を動かすたびに微かな痺れが背筋を駆け上がる。
何を、しようと言うのだ、サンダーさんは。
「ヒューマ、行キマスヨ」
「い、っ……くって、どこへ……?」
ようやく、離れていったサンダーの指に飛雄馬は身震いし、彼が口にした言葉の意味を尋ねた。
腹の奥がじんじんと疼いていて、飛雄馬はその感覚に歯噛みしながらも広げていた足を閉じようとする。
しかして、サンダーはそれを許さず、飛雄馬の両足を掴むと、己の腰を挟み込むような格好を彼に取らせた。
尻には位置から言って、恐らく男のそれが押し当てられていて、飛雄馬はハッ!と目を見開く。
まさか、最初からそのつもりだったのか、サンダーさんは────。
「ヒューマ、私ヲ受ケ入レテクレマスネ」
「ばっ、馬鹿な!サンダーさん、そんな、ことって……」
「Oh……ソレハ残念デス。ヒューマ、ワタシノ言ウ事ヲチャント守ッテイレバ、モットイイ選手ニナレマース」
言いつつ、サンダーは穿いているズボンを下げ、中から完全に屹立した男根を取り出した。
飛雄馬はそれに一瞬、魅入ったもののすぐに目を逸らし、そのまままぶたを閉じると、観念したかのように頷く。
すると、つい先程まで指が入っていたそこに、熱いものが押し当てられたかと思うと、ぐっ!と力強く中にそれが押し入ってきて、飛雄馬は体を仰け反らせた。
「〜〜っ、っ!」
身を置く掛け布団を固く握りしめ、飛雄馬は腹の中を強引に突き進んでくる熱に奥歯を噛み締める。
こんなことが、何の役に、立つというのだサンダーさんは……!
尻にサンダーさんの腿がぶつかる感触があって、飛雄馬はそこで、完全に腹の中に彼のものが埋め込まれたことを察する。
「ヒューマ、気持チイイデスカ?」
「…………」
気持ちいいも何も、その形と圧に体を馴らすのがやっとで、呼吸をすることもままならない。
飛雄馬は足を大きく広げたまま、サンダーに虚ろな目を向ける。
瞬間、サンダーは引いた腰を、飛雄馬の尻に強く叩きつけた。
「う、ァっ……」
鋭く、重いその一打に、飛雄馬の頭の中に火花が散った。
今のは、一体。
あまりに強い衝撃に全身が震えている。否、痙攣していると言った方が適当か。
「初メハユックリ、行キマショウ」
これが、ゆっくりだって……?
サンダーが腰を動かすたびに、骨盤が砕けそうな衝撃を飛雄馬は受ける。
中を擦られ、奥を抉られ、その口からはあられもない声が上がる。
尖りきった乳首の先までその衝撃が走って、飛雄馬は、やめてくれと首を振った。
「No,ソレハデキマセン」
「奥っ、もう、奥っ……突かないでっ、サンダーさぁっ──〜〜!!」
中を深く抉られて、飛雄馬は全身を戦慄かせる。
サンダーの脇に抱えられた飛雄馬の足、その爪先はぴんと伸び切ってしまっている。
「ヒューマ、本番ハマダマダコレカラデス」
ニヤリとサンダーは笑みを浮かべ、己の体の横で揺れている飛雄馬の膝を掴むと、そのまま開かせた足を彼の腹の方へとそれを押し付けた。
「い゛っ──!!」
腹の内側を、サンダーの反った男根が擦って、前立腺の位置を突き上げる。
腰どころか、体全体を揺さぶられ、飛雄馬は身をよじって逃れようとするが、腹に体重をかけられ、それも叶わなかった。
全身が汗に濡れ、触れ合う肌がぬめる。
飛雄馬は幾度気を遣ったか分からぬままに、身を反らし、全身を上気させ、声を上げた。
そうして、ふと、廊下を行く足音が畳と布団が擦れ合う音に混じって聞こえてくることに気付いて、飛雄馬はハッ!とそこで我に返る。
「う〜トイレトイレ……」
「…………」
ごくん、と飛雄馬は唾液を飲み込み、廊下を行く声の主である伴宙太が通り過ぎるのを待つ。
けれども、サンダーはお構いなしに飛雄馬の腹の中を腰を回し、掻き乱した。
「あ、ァっ……っ!」
「ん?」
ピタリ、とサンダーの部屋の前で足音が止まる。
飛雄馬は指を噛むことで、声を押さえた。
「……ぅ、ぅっ」
「なんじゃ、気のせいか」
どすどすと再び板張りの廊下を軋ませ、伴が去っていく。
飛雄馬は顔を逸らし、布団に頬を寄せ、伴に気付かれなかったことに安堵の溜息を漏らす。
口の中に僅かに血の味が残っていて、恐らく、指を噛み切ってしまったであろうことを察する。
と、ほんの少し開いていた口に指が捩じ込まれ、飛雄馬は目を大きく見開いた。
「大事ナ指ヲ傷付ケルノハヨクナイデス、ヒューマ」
「は……ぁっ……」
捩じ込まれた親指が舌の上を滑って、奥歯を撫でる。かと思うと、頬をさすって、再び舌をなぞる。
飛雄馬は口からとろりと唾液を滴らせながら、口の中を這うサンダーの指の感触に頭を痺れさせた。
「うう、まったく便所が遠くていかんのう。行って帰るまでに眠気が覚めるわい」
ぶつぶつと呟きながら伴が去っていく声を聞きながら飛雄馬はサンダーの指をしゃぶる。
「ふ……っ、ん、ん」
ひとしきり、飛雄馬の口内を蹂躙したのち、サンダーは彼の中に欲を吐き出す。
しかして、彼の男根は萎えることなく飛雄馬の中を穿つ。
飛雄馬は狂ったように声を上げ、幾度となくそれからも気を遣った。

それからようやく、解放されたのは夜も明ける頃で、飛雄馬は全身を痙攣させつつ、甲高い声を披露し始めた雀たちの声を聞いた。
喘ぎ続け、痛む喉で咳き込み、飛雄馬は腹に手を遣る。腰の感覚は最早ない。
「Sorry,ヒューマ、無茶ヲシテシマイマシタ」
「…………」
「マタ、今日ノ夜、来テクダサイ。マダマダトレーニング始マッタバカリデース」
飛雄馬はそう言って、近付いてくるサンダーの気配に目を閉じ薄く唇を開くと、彼の口付けを受け入れ、無言のままにその首へと腕を回した。