雨模様
雨模様 暇じゃのう、と伴はベッドに座ったまま読んでいた漫画雑誌を閉じ、ぼやいた。
窓の外では大粒の雨粒が地面を叩いている。今日は雨のせいで試合が中止となり、飛雄馬と同室の伴は宿舎の部屋で時間を潰していた。
「こないだ、たまにはゆっくりしたいと言っていなかったか」
椅子に座ってデスクの上でミットの手入れをしていた飛雄馬がふふっと笑みを漏らす。
「しかし、暇すぎるのも困るわい」
「じゃあ、練習でもしに行こうじゃないか」
椅子から立ち上がり、飛雄馬は私服からユニフォームに着替えようとするが、伴がおいでおいでをするように右手を動かした。
「……悪いが、そんな気分じゃない」
「…………」
目に見えて不満げな表情を浮かべる伴に対し、飛雄馬は再びクスッと微笑むと、ベッドに膝をついてそのまま乗り上げると膝立ちのまま伴の首へと腕を回す。
「別に、そういうことをしなくともおれは伴とこうしているだけで幸せだぞ」
ぎゅうっと太い首にしがみついて、飛雄馬は伴の頬に自分の顔を擦り寄せる。すると、伴も飛雄馬の脇の下から腕を回し、彼の体を抱いた。
「最近、そればかりで全然しとらんじゃないか」
「そうだったか……?」
くすくすと飛雄馬は口角を上げ、肩を揺らす。伴がそれに苛立ったか飛雄馬の体を抱く力を強めたために、飛雄馬はいたたっ、と声を上げる。
「おれだって、星とこうしているだけで落ち着くし幸せな気持ちになるが、たまには星に触れたいんじゃい……」
「………あまり、手荒な真似はしないでくれよ」
しばし考えたのち、飛雄馬は囁く。
伴は飛雄馬を上目遣い気味に見上げ、いいのか?と尋ねた。
「焦らすなよ、伴」
少し困ったような顔をして、飛雄馬は伴から腕を離すとその額に口付ける。そうすると、伴の大きな掌が頬に触れて、その指先が耳にかかった。
僅かに顎を上向けて、飛雄馬は目を閉じた。と、微かに開いた唇に柔らかいものが触って、一度離れたかと思ったが、再度ゆっくりと押し当てられる。
かあっ、と飛雄馬の全身が紅潮して、心拍数が上がる。指先が耳の後ろを撫でた刹那、伴は離した唇から熱い吐息を漏らした。
「む、いかん……久しぶりすぎてもう勃ってしもうたわい」
「ふふ、ちと早すぎやしないか」
そんな冗談を交わしつつ、二人は再び唇を重ねる。唇同士を触れ合わせ、その内には舌をも絡ませ合う。
唇を合わせたまま、伴は飛雄馬の着ている服の裾から手を差し入れ、それを脱がせようとたくし上げた。
「っ、あ………」
口付けのせいで興奮しきり、敏感になっている肌を撫でられ、飛雄馬は鼻がかった声を漏らす。
「自分、で……脱ぐから」
唾を飲み込んで、飛雄馬はベッドに尻をつけてからシャツの裾を握るとそれを捲り上げ、それぞれの腕と頭から抜いた。そうして、ベルトを緩めると、スラックスを脱ぎ、下着一枚となる。
言うまでもなく、飛雄馬が身に着けている下着の前もはち切れんばかりに張っており、彼の興奮具合を物語っていた。
「星………」
「……あんまり、見ないでくれよ。そう、いいものでもないだろう」
「いや、星は綺麗じゃぞい。日本一、いや、世界一……」
言いつつ、伴は飛雄馬のスラックスを脱ぐために伸ばした両足の間に体を入れ、彼の体に覆いかぶさるようににじり寄ってくる。飛雄馬もそれを受け、ベッドに両肘をついてごろりと横になった。冷えたシーツが肌に触れて、妙に心地良かった。
飛雄馬の位置からは伴が唾を飲み込んだか、ごくりと喉仏が動く様が鮮明に見てとれた。雨がひどくなったか、雨粒が激しく窓を叩く。部屋の中は明かりを付けているにも関わらず変に薄暗い。
伴は身を屈め、飛雄馬の唇へと己のそれを押し当てる。ぎしっ、とベッドが軋んで、大きく鳴った。
星、と伴は小さく囁いて、飛雄馬の腰を撫で、彼の穿いている下着を剥ぎ取る。
飛雄馬もまた、腰を浮かせてそれを手伝ってやった。すると、下着の中で押さえつけられていた飛雄馬の男根が顔を出し、臍の下付近に首をもたげた。
しかして伴はそこに触れることはなく、飛雄馬の唇から首筋に吸い付いて、それから耳を犯す。その度に飛雄馬はぞく、ぞくっと震え、シーツに爪を立てた。
跡を付けぬよう、軽く肌を吸い上げつつ、伴は時折舌を這わせる。そうすると飛雄馬は全身を反らし、甘い声を漏らすのだ。
ちゅうっ、と飛雄馬の胸へと伴は吸い付いて、その突起を舌先でくすぐる。
飛雄馬の全身に力が入って、汗がぱっと吹き出した。
舌先でちろちろと弄んでいたかと思えば、舌の腹でそれを押し潰して、上下に撫で上げる。
あっ、いやっ、と飛雄馬の口からそんな言葉が飛び出したが、伴は空いているもう一方の乳首を親指と人差し指の腹とで抓んで、それを捏ねるようにして指を動かした。
あっ!と一際大きく喘いでから、飛雄馬は口元に手を遣る。
ここが巨人軍の宿舎であること、隣に声が漏れぬことに加え、男同士でこんなことをしていると悟られぬようにだ。
ぎゅうっと目を閉じ、飛雄馬は腰を小さく揺らす。その男根の先からは先走りが漏れ出ており、腹をべっとりと濡らしていた。
「っ────ぅ、っ」
伴は飛雄馬の胸から口を離すと、今度はその下、腹筋の見事に割れた腹に口付けるようにして段々と飛雄馬の下半身へと下っていく。
けれども、男根だけには触れようとはせず、足の付け根に触れ、その肉付きの良い腿に触れ、ユニフォームに包まれ、見えぬ位置に跡を残していく。
「あ、ぅ………っ、」
一度伴はベッドから下りると、何やらチューブを手に戻ってくる。
飛雄馬に己を受け入れてもらうために、その入り口を慣らし、解そうと言うのだ。
胸を責められ、尚且つ一番触れてほしいところには触れてもらえず、焦らされ続け、昂ぶらせられた飛雄馬は全身が熱を持ち、熱く火照っているのを感じる。
今まさに、伴が触れてこようとしている箇所が疼いて、一向に触れてもらえなかった場所が切なげに震えているのがわかる。
手にしたチューブの中身を伴は指の熱で溶かし、柔らかくしつつ、飛雄馬の待つベッドに戻ってくると、彼の足を左右に開かせ、その窄まりに蕩けた軟膏のようなものを塗り付けると、ゆっくりとその上で指先にて円を描く。
「───っ、っ、く……」
腰が逃げ、飛雄馬の口からは声が漏れる。
伴は入れるぞい、と忠告してから中指を飛雄馬の中へと挿入していった。
伴の太く、節くれだった指が飛雄馬の内壁を押し広げ、奥へ奥へと進んでいく。
「ふ、っ…………う、ぅ」
根元までを飲み込ませ、伴はその指をぐっと第二関節から曲げ、飛雄馬の腹の中を押した。すると、とろとろっと飛雄馬の男根の先から体液が漏れ、腹に落ちる。
「ここで合っとったかのう」
「あ…………っ、い、ッ」
ビクッ、と飛雄馬の腰が大きく跳ね、彼の体内から伴の指が抜け出た。はあっ、と飛雄馬は大きく呼吸をし、口元にやっていた腕を離して、伴がほしい、と囁く。
「ほ、星?そんな、お前」
「ゆびじゃ、たらない……伴、はやく」
顔を真っ赤に染めて、飛雄馬は鼻声混じりに声を上げた。目元もいつの間にか潤んでおり、今にも涙が溢れんばかりだ。
「…………星」
伴は穿いているスラックスのベルトを緩めてから、ボタンを外しファスナーを下ろすと、そこから痛みさえ覚えるほどに充血し、張り詰めた自身の男根を取り出した。
それに手を添え、飛雄馬の尻へと充てがうと、目元を腕で覆った飛雄馬がぎゅっと歯を食い縛るのが伴の目に入った。
亀頭を挿入させて、伴はゆっくりと腰を突き入れる。じわじわと自身を飛雄馬の体温が包んで、締め付けてきた。
「ぐ、っ」
伴の額に汗が滲んだ。腰を振る前に果てそうだ。しかし、それでは──。
開きっぱなしの口から飛雄馬は掠れたか細い声を上げ、伴を受け入れていく。
飛雄馬の腹の奥を伴の猛りが圧迫して押し進む。根元までをやっとのことで挿入し終えてから、伴は飛雄馬の両足を脇に抱えると腰を振り始める。
それこそゆっくりと、いくら雨が激しいとはいえ隣の部屋に音が漏れぬよう、慎重に。
「う、ッあ…………あっ」
逸物の先が飛雄馬の腹側の粘膜を擦り上げる。腰を振るたびにそこを撫で、飛雄馬の男根は動きに合わせて揺れ、その先からは先走りを垂らす。
「星、星ぃっ!」
「っ、ば…………ん、っ……声、おっき……あ、ァっ……」
背を反らし、喉奥から声を上げながら飛雄馬はがくがくと震える。
「あ、っ」
間抜けな声を漏らし、伴は慌てて飛雄馬から男根を抜くと彼の腹の上にて欲をぶち撒けた。
「ふ………ぅ、うっ」
熱い液体が腹に撒かれ、飛雄馬はその熱にさえぞくぞくと身を戦慄かせた。
「うう………星、すまん。久しぶり過ぎて、そのう………」
ベッドの枕元に置いていたティッシュ箱から中身を取り出し、伴は飛雄馬の腹を拭いてやりつつ言い訳を口にする。
「それは、おれも………おなじさ。ふふ……」
足をゆっくりベッドの上に伸ばしながら飛雄馬は涙に濡れた瞳で伴を仰いだ。
「星………」
これまた泣きそうな顔をして飛雄馬を呼んだ伴の腹の虫が鳴いたもので、その音の主は気恥ずかしそうに自分の腹を撫でる。
飛雄馬は体をけだるそうに起こしながら、ラーメンでも食べに行こうか、と伴に声を掛けた。
ラーメン!と伴の顔がぱあっと輝いて、ベッドの隅に丸まっていたシャツとタンクトップとを頭からかぶるや否や、目に飛び込んできた伴の表情に飛雄馬はシャツの袖に腕を通しつつまた、ふふっと小さく微笑んだ。